書評
『HERE ヒア』(国書刊行会)
絵を使いながら、漫画やコミックとはだいぶ異なった趣向で物語を展開していく現代の「グラフィック・ノベル」のひとつの先端を示すのがこの本だろう。
暖炉と窓のあるリビング・ルームの一角だけが見開きごとにカラーで描かれ続ける。しかし、その同じ場所の眺めが、ときに微妙に、ときに劇的に変容していくのだ。時代と住人の移り変わりとともに、壁の絵やカーテンや壁紙、家具のセンスが変わっていき、人の服装や行動も時代を映し出していく。コマの中に新しいウィンドーが開かれて、別の時代の記憶がフラッシュバックのように甦(よみがえ)ったり。
ことばによる説明はほとんどないのだが、やがてこれがひとつの家族の物語にとどまらず、征服以前からの米国の風景と社会の変容の物語でもあることが浮かび上がってくる。ゆっくりとページを往復する新しい読書体験である。大久保譲訳。
暖炉と窓のあるリビング・ルームの一角だけが見開きごとにカラーで描かれ続ける。しかし、その同じ場所の眺めが、ときに微妙に、ときに劇的に変容していくのだ。時代と住人の移り変わりとともに、壁の絵やカーテンや壁紙、家具のセンスが変わっていき、人の服装や行動も時代を映し出していく。コマの中に新しいウィンドーが開かれて、別の時代の記憶がフラッシュバックのように甦(よみがえ)ったり。
ことばによる説明はほとんどないのだが、やがてこれがひとつの家族の物語にとどまらず、征服以前からの米国の風景と社会の変容の物語でもあることが浮かび上がってくる。ゆっくりとページを往復する新しい読書体験である。大久保譲訳。