書評
『魏志倭人伝の謎を解く - 三国志から見る邪馬台国』(中央公論新社)
中国から見た邪馬台国とは
魏志倭人伝を収める『三国志』とその政治的背景を分析し、邪馬台国の真実を解き明かそうとする。『三国志』は正史である。しかし、それは「正しい歴史」では必ずしもない。曹魏の中華としての正当性を示す史書なのである。魏志倭人伝に描かれた邪馬台国は、曹魏の国家的理念から見た「あるべき姿」であった。日本史家の間で論争の基盤となっていた位置関係や距離の情報はもともと歪められていた。果たして邪馬台国は、畿内にあったのか九州にあったのか。それは、読んでみてのお楽しみ。
本書のアプローチは、グローバルな文脈の中で他者の立場から日本を捉えることの重要性、裏を返せば、日本という枠に限定した思考の落とし穴をよく示している。