コラム
江國 香織「2018 この3冊」|佐野洋子『佐野洋子の「なに食ってんだ」』(NHK出版)、金井美恵子『スタア誕生』(文藝春秋)、小山田浩子『庭』(新潮社)
2018 この3冊
(1)『佐野洋子の「なに食ってんだ」』佐野洋子著、オフィス・ジロチョー編(NHK出版)
(2)『スタア誕生』金井美恵子著(文藝春秋)
(3)『庭』小山田浩子著(新潮社)
(1)はとにかく贅沢(ぜいたく)な本。たべものをめぐる佐野洋子さんの、滋味深くゴキゲンな上に悲哀も漂う絶品の文章の数々に、カラー写真とイラストがどっさりついている。その美しさといったらあなた、と、口調がへんになるほどの美しさとおいしそうさだ。目玉焼きのアップ写真など目を奪われ、いくら眺めていても飽きない。レシピもついているので、佐野さんの愛した料理を実際に作ることもできる。
(2)は最初から最後まで、読む喜びに打ちふるえながら読める小説。『噂(うわさ)の娘』を読んでいればなつかしさも押し寄せてさらに幸福なのだが、読んでいなくても文章と作品世界の愉(たの)しさにひき込まれ、時間を忘れてしまうはずだ。
(3)は実に巧みな、おもしろい短編小説集。土くさいのに泥くさくなく、むしろドライで洗練されている。