選挙が変だ。メディアの予想は外れっぱなし。兵庫県知事が再選、石丸候補が都知事選で躍進、都議選で自民党が惨敗だ。極論がSNSを飛び交う≪ストーリー参加型選挙≫の危険な本性に目を向けるべきだ。
ある候補を急に推し始める。政治に関心がありいいことか。いや、SNSの罠かも。情報の溢れるネットでは極論が生き残る。単純で怪しいストーリー。見える世界の見えない裏側を語る陰謀論だ。それを知る優越感。過激に盛り上がる小集団が群生する。SNS選挙の主役だ。
著者は言う。吉本隆明に学べ。吉本は戦後知識界の巨人。なぜか?
吉本は戦後、自らの軍国思想を清算し、共産党や戦後民主主義を批判し、転向知識人を告発した。流通するストーリーに抗う「自立」を唱えた。≪吉本の政治思想には全く共感でき≫ないとする著者は、でも、吉本が日常の生活を拠点としたことを評価する。ストーリーの仕掛けを見破り切り返す彼の手法を学ぼう。
メディア・リテラシーでは、フェイクニュースや陰謀論に対抗不能。吉本を真似して、SNSのふりまくストーリーと戦う思考の拠点を各人が築くしかない。慧眼である。