書評

『孝経 儒教の歴史二千年の旅』(岩波書店)

  • 2025/05/19
孝経 儒教の歴史二千年の旅 / 橋本 秀美
孝経 儒教の歴史二千年の旅
  • 著者:橋本 秀美
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-01-20
  • ISBN-10:400432050X
  • ISBN-13:978-4004320500
内容紹介:
東アジアで『論語』とならび親しまれてきた『孝経』は、儒教の長い歩みを映しだす鏡のような存在だ。古代における経典の誕生と体系化、解釈学の興亡と皇帝によるテキスト編纂、失われた書物を… もっと読む
東アジアで『論語』とならび親しまれてきた『孝経』は、儒教の長い歩みを映しだす鏡のような存在だ。古代における経典の誕生と体系化、解釈学の興亡と皇帝によるテキスト編纂、失われた書物をめぐる日中の学問交流、そして「孝」の教えをめぐるせめぎ合い―小さな古典から、儒教の大いなる流れをスリリングに案内する。

目次
序章 『孝経』が映しだす儒教の歴史
第一章 書物の誕生と鄭玄による体系化―漢代まで
第二章 『古文孝経』と孔安国伝の謎―魏晋南北朝時代
第三章 テキストが確定される―唐、玄宗御注の成立
第四章 使われる経典に―宋から明清へ
第五章 『孝経』を読んでみよう
孝経は孔子の教えを記す古典。千八百字と短く初学者向きだ。中国や日本でよく読まれた。その歴史を漢代から現代までたどる旅である。

孝経という名前だが、親孝行に限らない。為政者の心構えが中心だ。≪先王有至徳・要道、以順天下、民用和睦、上下無怨。汝知之乎≫(古代の王は徳と道で天下を治め、民は平和で統治に不満がなかった。いいかね?=評者訳)。後漢の鄭玄(じょうげん)、魏の王粛(おうしゅく)、唐の玄宗、宋の朱子…らが注をつけた。散逸したものも多い。

書物は写本で伝わる。誤字脱字が避けられない。そこで石碑をつくりテキストを固定した。出版が普及すると、版本の照合が容易になった。こんな文献学の基本も学べる。

中国で散逸した書籍が日本に残っていたりする。江戸時代、太宰春台校定の『古文孝経(孔安国伝)』が清に輸出され『四庫全書』に収められた。日本の研究水準は高かった。鈴木順亭は越後の人。江戸に出て孝経関連書を買い集め『孝経疏証(そしょう)』を著し、二四歳で亡くなった。大正年間に出版され高い評価をえた。

儒学を忘れた日本人は方向感覚を失っている。伝統の引き出しを大事にしなさい。貴重な忠告である。
孝経 儒教の歴史二千年の旅 / 橋本 秀美
孝経 儒教の歴史二千年の旅
  • 著者:橋本 秀美
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-01-20
  • ISBN-10:400432050X
  • ISBN-13:978-4004320500
内容紹介:
東アジアで『論語』とならび親しまれてきた『孝経』は、儒教の長い歩みを映しだす鏡のような存在だ。古代における経典の誕生と体系化、解釈学の興亡と皇帝によるテキスト編纂、失われた書物を… もっと読む
東アジアで『論語』とならび親しまれてきた『孝経』は、儒教の長い歩みを映しだす鏡のような存在だ。古代における経典の誕生と体系化、解釈学の興亡と皇帝によるテキスト編纂、失われた書物をめぐる日中の学問交流、そして「孝」の教えをめぐるせめぎ合い―小さな古典から、儒教の大いなる流れをスリリングに案内する。

目次
序章 『孝経』が映しだす儒教の歴史
第一章 書物の誕生と鄭玄による体系化―漢代まで
第二章 『古文孝経』と孔安国伝の謎―魏晋南北朝時代
第三章 テキストが確定される―唐、玄宗御注の成立
第四章 使われる経典に―宋から明清へ
第五章 『孝経』を読んでみよう

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年3月29日

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