書評

『ぼくのことをたくさん話そう』(光文社)

  • 2025/05/24
ぼくのことをたくさん話そう / チェーザレ・ザヴァッティーニ
ぼくのことをたくさん話そう
  • 著者:チェーザレ・ザヴァッティーニ
  • 翻訳:石田 聖子
  • 出版社:光文社
  • 装丁:文庫(168ページ)
  • 発売日:2024-12-11
  • ISBN-10:4334105327
  • ISBN-13:978-4334105327
内容紹介:
眠れぬ夜の寝床に霊が現れ、ぼくの手を取って飛び上がり、地獄から煉獄、天国まで、「あの世」への旅にいざなう……。『自転車泥棒』『ひまわり』など20世紀イタリアを代表する映画の脚本家が、ユーモラスで味わい深い物語を連作掌編とでもいうべき手法で紡いでいく小説。
ザヴァッティーニ(一九〇二-八九)は、イタリア映画不朽の名作「自転車泥棒」「ひまわり」などの脚本家として知られる。しかし、彼は文学やジャーナリズムなど、多岐にわたる分野で活躍した才人だった。本書は彼の最初の小説(一九三一年刊)である。刊行当時大きな話題となり、「ザヴァッティーニ事件」と騒がれたほどだったという。

ある日、「ぼく」は「あの世の旅にご招待したい」と申し出た霊とともに空に舞い上がり、世界の様々な場所を訪ね、ダンテの『神曲』の筋書きをなぞって煉獄(れんごく)から天国へと動いていく。幻想的な設定はさておき、むしろ「宇宙に浮かぶ惑星」のように各自が一つの世界をなす人間たちの営みから、次々と物語を引き出していく著者の優しくユーモアに満ちた手さばきがすばらしい。そうして、世界で繰り広げられる平凡な人々の愛と苦しみ、貧しさと幸せに光が当てられる。

文学と映画の両方に詳しい訳者の、原作への愛情が感じられる翻訳だ。本邦初訳。この素敵な佳品がまだ翻訳されていなかったのかと、驚いた。
ぼくのことをたくさん話そう / チェーザレ・ザヴァッティーニ
ぼくのことをたくさん話そう
  • 著者:チェーザレ・ザヴァッティーニ
  • 翻訳:石田 聖子
  • 出版社:光文社
  • 装丁:文庫(168ページ)
  • 発売日:2024-12-11
  • ISBN-10:4334105327
  • ISBN-13:978-4334105327
内容紹介:
眠れぬ夜の寝床に霊が現れ、ぼくの手を取って飛び上がり、地獄から煉獄、天国まで、「あの世」への旅にいざなう……。『自転車泥棒』『ひまわり』など20世紀イタリアを代表する映画の脚本家が、ユーモラスで味わい深い物語を連作掌編とでもいうべき手法で紡いでいく小説。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年3月15日

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