コラム

張 競「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>八鍬友広『読み書きの日本史』(岩波新書)、<2>玉川裕子『「ピアノを弾く少女」の誕生 ジェンダーと近代日本の音楽文化史』(青土社)、<3>友田健太郎『自称詞<僕>の歴史』(河出新書)

  • 2025/04/21

2023年「この3冊」

<1>八鍬友広『読み書きの日本史』(岩波新書)

<2>玉川裕子『「ピアノを弾く少女」の誕生 ジェンダーと近代日本の音楽文化史』(青土社)

<3>友田健太郎『自称詞<僕>の歴史』(河出新書)

<1>は日本語表記法の移り変わりと読み書きの教育史をめぐって、仮名が生まれる前から近代にいたるまでの経緯を語ったものである。異なる学問領域を跨(またが)る難しいテーマだが、膨大な文献を読みこなした上、専門性の高い話題を一般向けにわかりやすく解き明かした。

<2>はピアノの演奏という事象を通して、女子の音楽習得におけるジェンダー規範を明らかにした。明治時代にさかのぼり、小説、メディア、女子教育、百貨店の商業戦略との関連性を腑分(ふわ)けしながら、音楽の分野において女性が大活躍できた理由を突き止めた。

日本語の第一人称、第二人称ほど外国人学習者を発狂させるものはない。<3>はその筆頭の「僕」について、『古事記』から近代までの使用史を丁寧な資料調査にもとづいて再現した。

読み書きの日本史 / 八鍬 友広
読み書きの日本史
  • 著者:八鍬 友広
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(258ページ)
  • 発売日:2023-06-22
  • ISBN-10:4004319781
  • ISBN-13:978-4004319788
内容紹介:
古代における漢字の受容から、近代学校の成立まで。リテラシーの社会的意味を広くとらえる通史。

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「ピアノを弾く少女」の誕生: ジェンダーと近代日本の音楽文化史 / 玉川 裕子
「ピアノを弾く少女」の誕生: ジェンダーと近代日本の音楽文化史
  • 著者:玉川 裕子
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2023-09-26
  • ISBN-10:4791775864
  • ISBN-13:978-4791775866
内容紹介:
なぜ少女たちはピアノを習うのか
日本に西洋音楽がもたらされ普及していくなかで、ほかの楽器に比べて一般の家庭に積極的に受け入れられていったピアノ。その習い手は、多くの場合には妻、そして娘であった。なぜほかの楽器ではなく、ピアノなのか。なぜその習い手は女性なのか。ピアノが普及していく黎明期の日本社会を丹念に追い、その背景に迫る渾身の書。

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自称詞〈僕〉の歴史 / 友田 健太郎
自称詞〈僕〉の歴史
  • 著者:友田 健太郎
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2023-06-24
  • ISBN-10:4309631673
  • ISBN-13:978-4309631677
内容紹介:
明治以降、なぜ日本語“僕”は、男性だけに普及したのか?幕末の志士・吉田松陰の書簡から村上春樹の最新長編まで、自称詞に込められた意味を読み解く。目次第1章 “僕”という問題第2章 “僕”… もっと読む
明治以降、なぜ日本語“僕”は、男性だけに普及したのか?幕末の志士・吉田松陰の書簡から村上春樹の最新長編まで、自称詞に込められた意味を読み解く。

目次
第1章 “僕”という問題
第2章 “僕”の来歴―古代から江戸時代後期まで
第3章 “僕”、連帯を呼びかける―吉田松陰の自称詞と志士活動
第4章 “僕”たちの明治維新―松陰の弟子たちの友情と死
第5章 “僕”の変貌―「エリートの自称詞」から「自由な個人」へ
終章 女性と“僕”―自由を求めて

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年12月16日

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