書評
『ギャラウェイ事件』(早川書房)
アンドリュウ・ガーヴの小説は何を読んでもおもしろいが、この作品は最高におもしろい。新聞記者がイギリス海峡のジャージー島で、偶然に出会った美女と恋におちる。が、三日後に女は失踪、新聞記者はその行方を捜す旅に出る――という全く新味のない発端だが、このあと新聞記者がベストセラー小説の盗作事件の渦中に巻き込まれるのが意外な展開。盗作事件とその巧妙な手口を正面から取り扱ったミステリは、多分これ以前には例がないだろう。その謎とサスペンスでさんざん読者を引きずりまわしたあとは、ウェールズの廃坑でのクライマックス。ここがまた冒険作家ガーヴの本領発揮部分。文句のつけようのない快作である。
「異常なシチュエーションの複雑な組み合わせといい、計算されつくしたプロットの周到さといい(中略)近年発表された探偵小説中でも上位に位する力作たるを失わない」福島正実
【この書評が収録されている書籍】
「異常なシチュエーションの複雑な組み合わせといい、計算されつくしたプロットの周到さといい(中略)近年発表された探偵小説中でも上位に位する力作たるを失わない」福島正実
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