書評
『同じ釜の飯 ナショナル炊飯器は人口680万の香港でなぜ800万台売れたか』(平凡社)
ナショナルの炊飯器は香港で59年の発売以来、累積で800万台売れ、今なお65%の市場占拠率を誇っている。といっても日本で見かけるあの製品ではない。香港人の好きな「トロッ」とした粥(かゆ)が炊け、蓋(ふた)にガラスの天窓が付き、最新式ではケーキが焼けるよう多機能仕様となっている「楽聲牌」(パナソニックの香港名)炊飯器である。
驚くのは、ナショナルが40年以上前から現地仕様で製造し、輸出していることだ。知恵を授けたのが現地代理店を率いる蒙民偉(モンマンワイ)。蒙は大阪工場を頻繁に訪れ、担当者が音を上げるほど厳しい注文を出し続けて香港仕様の炊飯器を鍛え上げ、松下幸之助から「あんたを信用する」の言葉一つで契約書なしに販売権を得た。
商品は、技術力だけでは受容されない。宣伝から運送・販売法まで、巨大な文化の壁をいかに乗り越えるのか。本書は多くのインタビューを基に、世界の米食地域を制覇する過程を生き生きと描き出す。
驚くのは、ナショナルが40年以上前から現地仕様で製造し、輸出していることだ。知恵を授けたのが現地代理店を率いる蒙民偉(モンマンワイ)。蒙は大阪工場を頻繁に訪れ、担当者が音を上げるほど厳しい注文を出し続けて香港仕様の炊飯器を鍛え上げ、松下幸之助から「あんたを信用する」の言葉一つで契約書なしに販売権を得た。
商品は、技術力だけでは受容されない。宣伝から運送・販売法まで、巨大な文化の壁をいかに乗り越えるのか。本書は多くのインタビューを基に、世界の米食地域を制覇する過程を生き生きと描き出す。
朝日新聞 2005年3月6日
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