書評
『日本商人の源流』(筑摩書房)
日本人はどんなビジネスをしてきたのか。平安~戦国時代の商業の変遷を概観できる歴史学の良書だ。
登場するのは、行商/旅商人/都市の座商人/海の商人/…と多彩な商人たち。彼らの生き方から、中世社会のありさまが透けてみえる。
神社の特権をかさに油を売り歩く「神人」がいた。中国から宋銭が流入し貨幣経済に。荘園の年貢は銭納になり、米や塩を市場で換金した。京都へは為替で送金。商人階層が勃興した。儲(もう)かる酒屋は土倉(高利貸し)になり、政権と癒着して憎まれた。民衆は徳政(借金帳消し)を求めた。山賊や盗賊が出没し、各所の関所は銭をとる。商人は座を組んで権益と安全の確保をはかった。京都の町衆は法華一揆で団結した。戦国大名を支えたのも各地の豪商だ。
西欧と比べ、日本の商人は都市~農村(荘園)にまたがっている。商人の自治はあまり強固でない。でも貨幣経済のもと、人びとの行動は合理的になり、新たな産業が育った。武士は都市を基盤に実力を蓄え、貴族や権門社寺は没落し、農村共同体は強くなった。日本の近代と資本主義を用意した基礎は中世にある。自分の足元を見つめる古典の復刊だ。
登場するのは、行商/旅商人/都市の座商人/海の商人/…と多彩な商人たち。彼らの生き方から、中世社会のありさまが透けてみえる。
神社の特権をかさに油を売り歩く「神人」がいた。中国から宋銭が流入し貨幣経済に。荘園の年貢は銭納になり、米や塩を市場で換金した。京都へは為替で送金。商人階層が勃興した。儲(もう)かる酒屋は土倉(高利貸し)になり、政権と癒着して憎まれた。民衆は徳政(借金帳消し)を求めた。山賊や盗賊が出没し、各所の関所は銭をとる。商人は座を組んで権益と安全の確保をはかった。京都の町衆は法華一揆で団結した。戦国大名を支えたのも各地の豪商だ。
西欧と比べ、日本の商人は都市~農村(荘園)にまたがっている。商人の自治はあまり強固でない。でも貨幣経済のもと、人びとの行動は合理的になり、新たな産業が育った。武士は都市を基盤に実力を蓄え、貴族や権門社寺は没落し、農村共同体は強くなった。日本の近代と資本主義を用意した基礎は中世にある。自分の足元を見つめる古典の復刊だ。
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