コラム
辻原登「2017この3冊」毎日新聞|『リリース』古谷田奈月『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良『ナボコフ・コレクション』ウラジミール・ナボコフ
2017 この3冊
〈1〉『リリース』古谷田奈月著(光文社・1728円)
〈2〉『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良著(文藝春秋・1728円)
〈3〉『ナボコフ・コレクション マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック』ウラジミール・ナボコフ著(新潮社・4968円)
〈1〉奇想綺譚(きたん)ではあるが、ジェンダーフリーの近未来ファシズム国家をめぐる政治的、思想的闘争に絡めて若者の愛の世界を描こうとする作者の意図は明確で、遥(はるか)か遠く『悪霊』の世界のピリピリした空気が
〈2〉戦後日本文学は久しぶりに本物の青春小説を獲得した。角を曲るごとに、新しい、意外な風景が展開する。めくるめくドンデン返し。台湾の過去と現在、アメリカ、そして世界で「日本語」という現在が、少年たちの世界で炸裂(さくれつ)する。エドワード・ヤンの傑作映画「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」に拮抗する。
〈3〉ロシア語原典からの初訳。昔、英語版からの翻訳で読んだ。魅力は変わらない。エピグラフに「……渦ぎし日の恋を思い 渦ぎし愛を思う…」(プーシキン)がある。
今年は、読むと危険な青春小説三冊が揃った。
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