コラム
江國 香織「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>マシュー・ベイカー『アメリカへようこそ』(KADOKAWA)、<2>ヴァージニア・ハートマン『アオサギの娘』(早川書房 )、<3>川上弘美著『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(講談社)
<1>はともかくおもしろい短編集。小説というものの本来持つ強さと自由さを思いださせてくれた。アメリカを描くのではなく本のなかに新鮮にアメリカを出現させていて、そのエネルギーにはただ驚く。大胆な発想と濃密な細部、感傷を排した書きぶりだからこそ感情を揺さぶられる。一編ずつごくごく飲むように読み、その都度心臓の色を染め変えられるような気がした。
<2>は風景描写の美しい、繊細なミステリー小説。家族と記憶、時の流れと風土――。五感全部を刺激されながら謎を追うのは、豊かで贅沢(ぜいたく)な読書時間だった。
<3>は静かな、磨かれた言葉でできた長編小説。ながい時間が詰まっているのに余分な重さがなく、人の営みのささやかさと特別さがただ光を放っている。ためいきがでるほど見事な職人技だと思う。
<2>は風景描写の美しい、繊細なミステリー小説。家族と記憶、時の流れと風土――。五感全部を刺激されながら謎を追うのは、豊かで贅沢(ぜいたく)な読書時間だった。
<3>は静かな、磨かれた言葉でできた長編小説。ながい時間が詰まっているのに余分な重さがなく、人の営みのささやかさと特別さがただ光を放っている。ためいきがでるほど見事な職人技だと思う。
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