書評
『B級ニュース図鑑』(新潮社)
『金魂巻』の渡辺和博とならび現代出版界をリードする泉麻人がひさびさにいい書き下ろしをだしてくれた。『B級ニュース図鑑』(新潮文庫)。テレビ画面の片隅や若者雑誌のコラムでしか仕事をしていないと思ったらおおまちがいで、わざわざ文庫のために書き下ろしたというから、気がはいっている。
ある年齢以上の読者にとって、売れ筋商品や流行のストリートのオタク的評論ばかりしている泉麻人は異星人みたいなもんかもしれないが、今度の仕事は珍しくある年齢以上の人にも楽しめるから、食わず嫌いの人にもおすすめしたい。 内容は、『B級ニュース図鑑』のとおりで、昭和三十一年から平成二年までの新聞の三面の隅のほうを飾ったB級のニュースのうちからオヤッ、タハーと声の出るものばかりを集め、それに泉流の私語解説を加えている。
図鑑と付いているが、この点は苦労したらしく、B級ニュースにまつわる写真はなかなか集まっていないが、それでも『サタンの爪』(昭和三十三年)とか「著者がストックしていた万博の宣伝チラシ」(昭和四十五年)とか、けっこうシブイ。
ニュースをいくつか紹介しよう。
昭和三十四年七月十日、読売夕刊、「都内の“農村地帯”練馬区大泉、仲町、世田谷区砧方面に十数年ぶりでモンシロチョウの異常発生があり、畑一面はさながらモンシロチョウの海……子供たちは飛び出して捕えるどころか逆にチョウチョウに追いかけられ、泣き出す始末……畑の中を通るバスにチョウチョウが体当たりしてくるほど……」
昭和四十二年三月三十一日、毎日、「都清掃局は四月一日から農民によるふん尿くみ取りを全面的に廃止する……」
昭和五十七年九月十九日、朝日、「豊橋市の民家で、地下に核シェルターをつくるため、庭に穴を掘っていたところ土砂崩れがあり……生き埋めになった」
この本はこれまで現代ものばかりやってきた泉麻人の、初の”歴史もの”として注目したい。
【この書評が収録されている書籍】
ある年齢以上の読者にとって、売れ筋商品や流行のストリートのオタク的評論ばかりしている泉麻人は異星人みたいなもんかもしれないが、今度の仕事は珍しくある年齢以上の人にも楽しめるから、食わず嫌いの人にもおすすめしたい。 内容は、『B級ニュース図鑑』のとおりで、昭和三十一年から平成二年までの新聞の三面の隅のほうを飾ったB級のニュースのうちからオヤッ、タハーと声の出るものばかりを集め、それに泉流の私語解説を加えている。
図鑑と付いているが、この点は苦労したらしく、B級ニュースにまつわる写真はなかなか集まっていないが、それでも『サタンの爪』(昭和三十三年)とか「著者がストックしていた万博の宣伝チラシ」(昭和四十五年)とか、けっこうシブイ。
ニュースをいくつか紹介しよう。
昭和三十四年七月十日、読売夕刊、「都内の“農村地帯”練馬区大泉、仲町、世田谷区砧方面に十数年ぶりでモンシロチョウの異常発生があり、畑一面はさながらモンシロチョウの海……子供たちは飛び出して捕えるどころか逆にチョウチョウに追いかけられ、泣き出す始末……畑の中を通るバスにチョウチョウが体当たりしてくるほど……」
昭和四十二年三月三十一日、毎日、「都清掃局は四月一日から農民によるふん尿くみ取りを全面的に廃止する……」
昭和五十七年九月十九日、朝日、「豊橋市の民家で、地下に核シェルターをつくるため、庭に穴を掘っていたところ土砂崩れがあり……生き埋めになった」
この本はこれまで現代ものばかりやってきた泉麻人の、初の”歴史もの”として注目したい。
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