書評
『もう一度 倫敦巴里』(ナナロク社)
ながらく復刊を待たれていた伝説的名著の、四十年ぶりの刊行である。
おもしろい! たのしい! すばらしい! 洒落ていて、スマートで気取ってない。
赤塚不二夫のイヤミをダリに描せて、名作『雪国』の書き出しを、サルトルから村上春樹まで44通り、みごとに文体模写する。
あんまりおもしろいのでこの本が出されたころ、ジャンルとしての「パロディ」が話題をあつめてしまった。
ジャンルがおもしろかったわけじゃない。おもしろいものをつくるには、何にせよ「工夫」が必要なのだし、「技術」がともなっていなくちゃかなわない。
だが当時は、目新しかったパロディというコトバだけが一人歩きしておびただしい愚作が量産された。まるで、何度でも聞いたことのある駄ジャレを耳元で大音量で聞かされるようなはめになった。
結果として「パロディ」っていうコトバを日本語にしてしまった張本人の和田誠さんは、ご自身ではこのコトバを使うことがなかったばかりか、おそらく、この『倫敦巴里』の再刊や文庫化も自ら阻んできたのではないか?
なんにしても、このように復刊がなったというのはめでたいことだ。新しい原稿もたくさん入っている。
たのしいこと、おもしろいものを作り出す才能というのは、稀有のものだというのを、ワレワレは知らなくてはいけない。
そして、そういう人が時として世に現れること、それを知るなら、それをたのしむのがほんとうだ。
和田誠という天才を、私たちはたのしもう。そして感謝しよう。
涼しい顔して、こんなにおもしろいことを軽々しく、やってしまう巨匠を讃えよう。
パロディを日本語にしてしまった和田さんは、イラストレーションというコトバも日本語にした張本人であり、日本の雑誌作りの革命を、やすやすと仕遂げてしまった張本人でもあった。
おもしろい! たのしい! すばらしい! 洒落ていて、スマートで気取ってない。
赤塚不二夫のイヤミをダリに描せて、名作『雪国』の書き出しを、サルトルから村上春樹まで44通り、みごとに文体模写する。
あんまりおもしろいのでこの本が出されたころ、ジャンルとしての「パロディ」が話題をあつめてしまった。
ジャンルがおもしろかったわけじゃない。おもしろいものをつくるには、何にせよ「工夫」が必要なのだし、「技術」がともなっていなくちゃかなわない。
だが当時は、目新しかったパロディというコトバだけが一人歩きしておびただしい愚作が量産された。まるで、何度でも聞いたことのある駄ジャレを耳元で大音量で聞かされるようなはめになった。
結果として「パロディ」っていうコトバを日本語にしてしまった張本人の和田誠さんは、ご自身ではこのコトバを使うことがなかったばかりか、おそらく、この『倫敦巴里』の再刊や文庫化も自ら阻んできたのではないか?
なんにしても、このように復刊がなったというのはめでたいことだ。新しい原稿もたくさん入っている。
たのしいこと、おもしろいものを作り出す才能というのは、稀有のものだというのを、ワレワレは知らなくてはいけない。
そして、そういう人が時として世に現れること、それを知るなら、それをたのしむのがほんとうだ。
和田誠という天才を、私たちはたのしもう。そして感謝しよう。
涼しい顔して、こんなにおもしろいことを軽々しく、やってしまう巨匠を讃えよう。
パロディを日本語にしてしまった和田さんは、イラストレーションというコトバも日本語にした張本人であり、日本の雑誌作りの革命を、やすやすと仕遂げてしまった張本人でもあった。
週刊文春 2017年3月23日
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