書評
『マイクロワールド』(早川書房)
専門知識を駆使したサバイバル
マイクル・クライトンと言えば、『アンドロメダ病原体』『ジュラシック・パーク』などの傑作群の執筆はもちろん、映画『ウエストワールド』や『未来警察』の監督から、TVドラマ『ER緊急救命室』の製作総指揮まで、多方面で活躍してきた不世出の天才。その巨人も病魔には勝てず、2008年11月、66歳で世を去った。昨年アメリカで刊行された本書『マイクロワールド』は、没後発見された書きかけの原稿(全体の4分の1ほど)が原型。残された手書きのメモや資料をもとに、『ホット・ゾーン』で知られる腕利きのサイエンス・ライター、リチャード・プレストンが2年がかりで完成させた。
今回の趣向は、人体の縮小。いわば、クライトン版『ミクロの決死圏』だが、本書の決死行の舞台になるのは、ハワイの大自然。巨大なアリやヤスデやハチが次々に襲ってくる。人間が小さくなることで昆虫が怪獣化したわけで、ある意味、逆『ジュラシック・パーク』と言えなくもない。
物語の主役は、植物学や昆虫学を専門とする、男女7人のハーバード大学院生。対する悪役は、超小型ロボットや新薬の開発を行う新興ハイテク企業、Nanigen(ナニジェン)マイクロテクノロジーズのドレイク社長。同社の研究スタッフにならないかと勧誘された7人は、見学のため、ハワイのオアフ島にある同社研究所を訪れ、革命的な物質縮小装置を目のあたりにする。
だが、同社が重大な犯罪に関わった事実をつきとめた彼らは、口封じのため、その装置によって体を100分の1サイズに縮められ、ハワイの密林に放り出されてしまう。しかも、縮小化には副作用があり、数日以内にもとの大きさに戻らないと死に至る危険が高い。はたして7人は、この絶望的な状況を乗り切れるのか?
院生たちがそれぞれの専門分野(昆虫学、植物学、および動植物の毒)の知識を駆使してサバイバルしていく冒険パートは無類のおもしろさ。「だれが最後まで生き残るのか?」というサスペンスに加え、思いがけない展開も用意され、ヴィンテージ級のクライトン節が堪能できる。
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