書評
江國 香織「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>フランチェスカ・スコッティ、北代美和子訳『亀たちの時間』(現代書館)<2>クローディア・グレイ、不二淑子訳『『高慢と偏見』殺人事件』(早川書房)<3>ジョン・スタインベック、青山南訳『チャーリーとの旅 アメリカを探して』(岩波書店)
2025年「この3冊」
<1>フランチェスカ・スコッティ、北代美和子訳『亀たちの時間』(現代書館)
<2>クローディア・グレイ、不二淑子訳『『高慢と偏見』殺人事件』(早川書房)
<3>ジョン・スタインベック、青山南訳『チャーリーとの旅 アメリカを探して』(岩波書店)
<1>はすばらしい短編集。研ぎ澄まされた言葉と写真のように鮮明な描写力で、人生の豊かさと一回性、とり返しのつかなさを浮かびあがらせる。一編ずつはとても短いのに、深く長く余韻が残る。切れ味と詩性を堪能した。<2>はジェイン・オースティン好きにはたまらないミステリー。きわめて丁寧につくられていて、機知に富む。六冊分のオースティン作品の登場人物に再会できたようでたのしい。そこに殺人事件が発生するのだから、興趣の尽きることがない。ファニーが初めて夫への怒りに気づいたりもして、現代的な味つけもされている。
<3>は新訳で、行き届いた訳注の塩梅(あんばい)が最高。クラシックな名作だけれど不思議なほど新鮮で、居ながらにして土地と時間両方の旅ができる。
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