書評
『高慢と偏見とゾンビ』(二見書房)
異なる物同士が醸す異様な力
本書を見た時「これは何?」と、激しく疑問に思った私。しかし読み始めてみると、この本はまさに「高慢と偏見とゾンビ」以外の何物でもないのです。物語の基本は、「高慢と偏見」と同じ。しかし、そこには生きる者までがゾンビ化する疫病が蔓延(まんえん)しており、女性にとってもゾンビと戦う能力はたしなみの一つになっています。ご存じベネット家の五姉妹は少林寺で武術修行した経験を持ち、中でも次女エリザベスはその名手。恋に悩みながらも、ゾンビを次々と倒していくのです。
ゾンビが登場しようとダーシーの屋敷で出されるご馳走(ちそう)が「ナレズシ」であろうと、オースティン作品としての面白さがきちんと伝わるのは、驚かされるところ。最後には、敵を倒す力が、果たして女性にとって魅力となるか否かを、考えさせられたのでした。
全く異なる味わいを同時に楽しむことができるこの本。しかしオースティンとゾンビ、両方好きな人がどれほどいるのか、と思ったらアメリカでは大ベストセラーだそうで、異なる物同士の組み合わせが時に異様な力を発揮することを実感します。
朝日新聞 2010年3月21日
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