書評
『「有名人になる」ということ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
自らの品質管理の成果
「カツマー現象ってあったよね」の世間の声に先手を打った著者が、自らの経験を踏まえて有名人とは何か、どうしたらなれるかの疑問に応えた一冊。著者は誰でも有名人になれると説く。なれてないと嘆く人は努力の回数が少ないのだ。「勝率5%の勝負を50回行って、全部の勝負に負ける確率はたったの7.7%」。有名人とは勝つまでやめなかった人たちである。実際、著者は3冊目の本がヒットし、有名人になる機会を掴(つか)んだ。一瞬納得しそうになるが、これに並ぶ20万部クラスのヒットは、年間8万冊刊行される内の約50冊。勝率0.0625%の勝負を50回行っても全部負ける確率97%。数字の魔術に騙(だま)されてはいけない。この方法で有名人になるのは難しい。
感心したのは、著者が有名人になるために実践した行動の方である。ラジオのレギュラーを持つため、スポンサー料100万円を出版社に「おねだり」してかき集め、「紅白」「金スマ」らの番組関係者の前で「出たい」とアピール。「情熱大陸」には、プレゼン資料を自ら用意し、制作会社同士のコンペティションを勝ち抜いた。並の神経、面の皮では難しい。
だが、ある日、著者は自分が「終わコン(終わったコンテンツ)」であることに気付く。著作がかつてほど売れなくなったのだ。時間に追われて書いた「Easy」な内容であることがファンにばれたと自己分析する。
普通の有名文化人ならテレビの仕事を優先し、「Easy」な口述筆記などに頼るところだが、著者はそれをせず、バラエティー番組の出演を減らし、自らの品質管理に立ち返る。
あまり聞かない例であるが、それができたのがとても勝間和代らしいし、濃い内容の本書には、その成果が表れている。「終わコン」は、柄にもない謙遜である。
朝日新聞 2012年05月20日
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