書評
『わが兄バルザック―その生涯と作品』(鳥影社)
偉大な文学者や芸術家の伝記を書こうとするとき、伝記作者が最も切実に知りたいと思うのは、彼らの幼年時代の肉親とのかかわりであるが、その部分は当然最も厚いベールにつつまれている。バルザックもその例にもれない。ただ、彼の場合は、二歳年下の妹ロールによる伝記が残されていて、これがかけがえのない貴重な一次資料となっている。もっともこの伝記はバルザックの死の直後に出版されたきり、一、二の全集に収録されただけなので、その内容は、これまで間接的な形でしか伝わっていなかったが、今回、全訳が出版され、バルザック・ファンは、最も直接的な証言に直(じか)に接することができるようになった。もちろん、近親ゆえの美化、隠蔽(いんぺい)は当然ある。
だがサルトルがフロベールの伝記でやったように、そうした偏差を正す術を心得ていさえすれば、この伝記がバルザックについてのもっとも貴重な情報源になることはまちがいない。そして、その偏差修正の鍵は訳者によってすでに与えられている。
【この書評が収録されている書籍】
だがサルトルがフロベールの伝記でやったように、そうした偏差を正す術を心得ていさえすれば、この伝記がバルザックについてのもっとも貴重な情報源になることはまちがいない。そして、その偏差修正の鍵は訳者によってすでに与えられている。
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