書評
『イギリス音楽の復興―音の詩人たち、エルガーからブリテンへ』(旺史社)
イギリス近代音楽史上の奇人伝
日本はドイツ音楽の金城湯池なので、イギリスの作曲家など一向に興味なしという人が多い。試みに何人か名前を挙げてみようか。ダウランド、キャンピアン、パーセル、ウェズリー、エルガー、ディーリアス、コールリッジ=テイラー、ハールストン、ホルブルック、バントック、スミス、ヴォーン=ウイリアムズ、グレインジャー、もういい加減にしようか。これらの中でいったい何人御存知であったか。イギリス人作曲家はかほどに「知られていない」のが日本の現状である。
ダウランド等を輩出したエリザベス1世時代、ちょっと下ってパーセル、そのあとイギリス音楽はまるで振わなくなる。けれどもどういうわけか、19世紀の後半から20世紀にかけて、突如として息を吹き返し、陸続として才能ある作曲家を産みだした・・・のだが、この時代の作曲家たちも多くは時の彼方に埋没しつつある。
本書は、このイギリス音楽のルネッサンスとも言うべき近代の音楽状況を広く見渡して、そこに綺羅星のごとく現われた数多くの作曲家たちについて、かなり詳密な伝記と、その作品に関する穏当なる批評を加えたものである。
四六上製二段組320頁余りの大著であるが、いや読み始めたら面白くて止まらない。なにしろここに出てくる近代イギリスの作曲家たちの変人奇人ぶり。そうしてその変人群像が、どのように社会の潮流と関わりながら、苦悩に満ちた人生を送ったか。巻頭の珍しい肖像写真とともに大いに楽しめる。
私自身も多くは未だ聞いたことのない作曲家たち、なんとかしてその作品を聞いてみたい、できたら自分でも演奏してみたいと、つくづく思わされた。嗚呼、イギリス近代音楽史の中の変人たち!
初出メディア

スミセイベストブック 2003年11月号
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