解説
『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』(論創社)
日本でも戦前から作品が読まれていた英国の閨秀作家ドロシー・L・セイヤーズ。彼女が遺した珠玉の短篇から13作を選りすぐり、日本独自編纂の作品集としてまとめたのが本書『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』です。
英国のドロシー・L・セイヤーズ協会(The Dorothy L. Sayers Society)より同協会推薦書として認められ、巻頭には協会事務局長ジャスミン・シメオネ氏による推薦文を原文と日本語訳の両versionで収録しています。
シメオネ氏曰く「収録作品は、いずれもセイヤーズの生前に出版された三冊の短篇集のなかでも選りすぐり。執筆は百年近く前ですが、作品の主題や発想は古びていません」(以上、推薦文より抜粋。井伊順彦・訳)との事。
本書に収録されている作品の内訳は、ピーター・ウィムジイ卿の事件簿が1作、モンタギュー・エッグ氏の事件簿が6作、ノン・シリーズ短篇が6作となっており、このうち3作が本邦初訳となります。
「ナイン・テイラーズ」や「学寮祭の夜」などが代表作として知られる貴族探偵ピーター・ウィムジイの名前を知る人は多いと思いますが、短篇でのみ活躍したモンタギュー・エッグの日本での知名度は低いと言わざるを得ません。
モンタギュー・エッグ氏はピータ一・ウィムジイ卿よりも約10遅れてデビューし、その事件は1930年代に全11作書かれています。日本では昭和12年に「メール・シャラール・バッシュバッス」が翻訳紹介されて以降、長い時間をかけて少しずつ訳出され、ようやく令和2年になってシリーズ全作が邦訳されました。
本書以前の訳は雑誌掲載のまま捨て置かれている事が多く、アンソロジーを除いた翻訳単行本は昭和11年刊行の『アリ・ババの呪文』(日本公論社)、昭和29年発行の『異色探偵小説選集4 アリ・ババ呪文』(日本出版協同)の2冊しかないうえ、〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズ以外の短篇が全収録の過半数を占めています。
両書へ収録された〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズの翻訳は以下の通り。
『アリ・ババの呪文』(日本公論社)
エッグ君の鼻(現行邦題「毒入りダウ’08年物ワイン」)
メール・シャラール・ハッシュバッス(現行邦題「マヘル・シャラル・ハシュバズ」)
香水の戱れ(現行邦題「香水を追跡する」)
『異色探偵小説選集4 アリ・ババ呪文』(日本出版協同)
「金言集」第一項(現行邦題「毒入りダウ’08年物ワイン」)
本書はシリーズ全集になっていないものの、モンタギュー・エッグ氏が手掛けた六つの事件が収められており、端正な本格ミステリをユーモアやペーソスで装飾した一種独特のクセを持った〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズの醍醐味が味わえる事と思います。
ドロシー・L・セイヤーズはアガサ・クリスティー、マージェリー・アリンガム、ナイオ・マーシュと共に〈英国女流作家ビッグ4〉と称される事もあります。
「論創海外ミステリ」では今後もセイヤーズの邦訳紹介を続けながら、アリンガムやマーシュの未訳作品紹介にも力を入れていきます。
本叢書の一部タイトルは電子書籍としても発売しておりますので、これまで「論創海外ミステリ」という叢書を手に取る事がなかった方にも、電子書籍版の発売を機に、既巻260冊を越える「論創海外ミステリ」の愛読者となっていただけましたら至極の喜びです。
[書き手] 「論創海外ミステリ」編集部
英国のドロシー・L・セイヤーズ協会(The Dorothy L. Sayers Society)より同協会推薦書として認められ、巻頭には協会事務局長ジャスミン・シメオネ氏による推薦文を原文と日本語訳の両versionで収録しています。
シメオネ氏曰く「収録作品は、いずれもセイヤーズの生前に出版された三冊の短篇集のなかでも選りすぐり。執筆は百年近く前ですが、作品の主題や発想は古びていません」(以上、推薦文より抜粋。井伊順彦・訳)との事。
本書に収録されている作品の内訳は、ピーター・ウィムジイ卿の事件簿が1作、モンタギュー・エッグ氏の事件簿が6作、ノン・シリーズ短篇が6作となっており、このうち3作が本邦初訳となります。
「ナイン・テイラーズ」や「学寮祭の夜」などが代表作として知られる貴族探偵ピーター・ウィムジイの名前を知る人は多いと思いますが、短篇でのみ活躍したモンタギュー・エッグの日本での知名度は低いと言わざるを得ません。
モンタギュー・エッグ氏はピータ一・ウィムジイ卿よりも約10遅れてデビューし、その事件は1930年代に全11作書かれています。日本では昭和12年に「メール・シャラール・バッシュバッス」が翻訳紹介されて以降、長い時間をかけて少しずつ訳出され、ようやく令和2年になってシリーズ全作が邦訳されました。
本書以前の訳は雑誌掲載のまま捨て置かれている事が多く、アンソロジーを除いた翻訳単行本は昭和11年刊行の『アリ・ババの呪文』(日本公論社)、昭和29年発行の『異色探偵小説選集4 アリ・ババ呪文』(日本出版協同)の2冊しかないうえ、〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズ以外の短篇が全収録の過半数を占めています。
両書へ収録された〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズの翻訳は以下の通り。
『アリ・ババの呪文』(日本公論社)
エッグ君の鼻(現行邦題「毒入りダウ’08年物ワイン」)
メール・シャラール・ハッシュバッス(現行邦題「マヘル・シャラル・ハシュバズ」)
香水の戱れ(現行邦題「香水を追跡する」)
『異色探偵小説選集4 アリ・ババ呪文』(日本出版協同)
「金言集」第一項(現行邦題「毒入りダウ’08年物ワイン」)
本書はシリーズ全集になっていないものの、モンタギュー・エッグ氏が手掛けた六つの事件が収められており、端正な本格ミステリをユーモアやペーソスで装飾した一種独特のクセを持った〈モンタギュー・エッグ氏〉シリーズの醍醐味が味わえる事と思います。
ドロシー・L・セイヤーズはアガサ・クリスティー、マージェリー・アリンガム、ナイオ・マーシュと共に〈英国女流作家ビッグ4〉と称される事もあります。
「論創海外ミステリ」では今後もセイヤーズの邦訳紹介を続けながら、アリンガムやマーシュの未訳作品紹介にも力を入れていきます。
本叢書の一部タイトルは電子書籍としても発売しておりますので、これまで「論創海外ミステリ」という叢書を手に取る事がなかった方にも、電子書籍版の発売を機に、既巻260冊を越える「論創海外ミステリ」の愛読者となっていただけましたら至極の喜びです。
[書き手] 「論創海外ミステリ」編集部
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