人気シリーズ『哲学史入門』。編者の斎藤哲也氏が≪哲学研究の第一人者を指南役に…聞き書き形式≫でまとめるスタイルで大好評だ。今回「Ⅳ」は「正義論、功利主義からケアの倫理まで」。期待が高まる。
話し手は六人。古田徹也氏は、倫理学とは何ですかという根本の問いを、児玉聡氏は、ベンサム、ミル以来の功利主義が時代と共にどう洗練されたかを、神島裕子氏は、ロールズの正義論の衝撃とそれに続く議論の前進を、じっくり語る。立花幸司氏は、アリストテレスが近年見直され徳倫理学として発展してきた道筋を、岡野八代氏は、相手を思いやるケアの視点が新しい倫理の地平を開くさまを、ブレイディみかこ氏は、イギリスの託児所で働く「アナキスト」たちの心豊かな生き方を、余さず語る。自分ひとりではとても描けない倫理をめぐる哲学の地図が、頁(ページ)を繰れば手に入る。これはお得だ。
気鋭の学者の研究の現場に飛び込み、ピンポイントの質問を連発する編者がさすがだし、返ってくる回答もすばらしい。哲学をこれから学ぶ人にも、その昔学び損なった人にも役に立つ。よくある哲学入門のはるか上を行く、必携のお薦め本だ。