書評
『セクシュアリティの歴史社会学』(勁草書房)
近代日本の性と性欲の歴史を論じた好著である。「性」とはいっても、取り上げられたのは性文化そのものではなく、一八七〇年代から一九七〇年代までの、性欲にまつわる言説である。なかでもオナニーについての論考は本書の重要な柱となっており、これまでの通説をくつがえす数々の新説が提起されている。
引用した文献を見ると、著者が調査した範囲がいかに広く、検証した資料がいかに膨大なのかがわかる。管見によると、近代の性についてこれほど詳細な研究はほかにまだない。学問的な手続きをきちんと踏んだだけでなく、緻密な調査にもとつく理論構築もしっかりしており、論述にも新意がある。しかも専門書にありがちなわかりにくさはなく、とくに歴史編は興味深く読める。明治、大正、昭和の文化史・社会史を知る上でも貴重な一冊である。
付録にリストアップされた一次資料は非常に詳細で、セクシュアリティ関係だけでなく、近代文化を扱う場合も目を通してほしい資料である。
【この書評が収録されている書籍】
引用した文献を見ると、著者が調査した範囲がいかに広く、検証した資料がいかに膨大なのかがわかる。管見によると、近代の性についてこれほど詳細な研究はほかにまだない。学問的な手続きをきちんと踏んだだけでなく、緻密な調査にもとつく理論構築もしっかりしており、論述にも新意がある。しかも専門書にありがちなわかりにくさはなく、とくに歴史編は興味深く読める。明治、大正、昭和の文化史・社会史を知る上でも貴重な一冊である。
付録にリストアップされた一次資料は非常に詳細で、セクシュアリティ関係だけでなく、近代文化を扱う場合も目を通してほしい資料である。
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