コラム
鹿島茂「2017この3冊」毎日新聞|『男らしさの歴史』アラン・コルバン他『風から水へ』鈴木宏『現代フランスを生きるジプシー』左地亮子
2017 この3冊
〈1〉『男らしさの歴史』全3巻 アラン・コルバン他監修、鷲見洋一他訳(藤原書店・各9504円)
〈2〉『風から水へ ある小出版社の三十五年』鈴木宏著(論創社・3240円)
〈3〉『現代フランスを生きるジプシー』左地亮子著(世界思想社・5616円)
出版業界はいよいよ末期的症状を呈しており、劇的な構造変化は必至である。出版部数は写本時代と変わらぬ数にまで落ち込むことが予想されるから、いまから対策を立てておかなければならない。
〈1〉はあまりの分厚さゆえに恐れをなしたのかだれも書評に取り上げなかった本だが、その分厚さに見合った破壊力を秘めている。すなわち歴史というものは男系原理の偏向を受けており、双系原理に立ってすべての言説を見直さなければならないという主張。〈2〉は出版業界がサバイバルするための処方箋がつまった本。どんなに売れそうもない本でもコアな読者が見込める両者なら出版をためらうべきではないのだ。
〈3〉は価値転倒的な発見を秘めた人類学研究書。人類が世界の果てにまで移住したのは案外、他の家族とのトラブルを避けたいためだったかもしれないのである。
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