コラム
鹿島 茂「2018 この3冊」|フィリップ・フック『ならず者たちのギャラリー』(フィルムアート社)、坂本尚志『バカロレア幸福論』(講談社)、新居洋子『イエズス会士と普遍の帝国』(名古屋大学出版会)
2018 この3冊
(1)『ならず者たちのギャラリー 誰が「名画」をつくりだしたのか?』フィリップ・フック著、中山ゆかり訳(フィルムアート社)
(2)『バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン』坂本尚志著(星海社新書)
(3)『イエズス会士と普遍の帝国 在華宣教師による文明の翻訳』新居洋子著(名古屋大学出版会)
(1)は画商という、美術史では軽視されてきた媒介者に光を当てた列伝。転換点は同時代の評価されざる画家の絵を売る画商が出現した十九世紀で、画商の美意識による発見が新しい価値を創造するが、いかに優れた画商でも同世代の画家しか評価しえないというのが興味深い。
(2)はフランスの普通バカロレア受験生用の課題作文の参考書の形をとった哲学的思考の入門書。課題作文にはテーマ分析、論理展開の設計図、論議の論理的配列が重要というのが骨子だが、考えるには「型」があり、「型」は教授可能だという主張は日本の教育改革においても参考になる。
(3)は全盛期の清に宣教活動に赴いたイエズス会士アミオの書簡の分析を中心とした学術研究だが、洋の東西における普遍観念の共通性に取り憑(つ)かれたアミオの知的探索の過程が興味深い読み物になっている。
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