コラム
橋爪 大三郎が選ぶ「2018 この3冊」森山徹『モノに心はあるのか』(新潮社)、村上篤直『評伝 小室直樹』(ミネルヴァ書房)、松岡由香子『正法眼蔵 第三 仏性』(七つ森書館)
2018 この3冊
(1)『モノに心はあるのか 動物行動学から考える「世界の仕組み」』森山徹著(新潮選書)
(2)『評伝 小室直樹 上・下』村上篤直著(ミネルヴァ書房)
(3)『正法眼蔵第三 仏性 私釈 成仏以来に具足する法なり』松岡由香子著(七つ森書館)
(1)は、ダンゴムシに「心がある」ことを実証した動物学者による、思索の書物。ふつう心と思われるものの実体を、潜在的な行動プログラムと想定し、生き物はもちろん、石にも心があると言えると説く。
(2)は、8年前に亡くなった政治学者・小室直樹博士の生涯を、丹念な取材と愛あふれる筆致で描いた傑作。逆境にめげない、真摯(しんし)な学問への情熱とたゆみない努力が、「ソビエト崩壊」の奇蹟(きせき)の預言をうんだ。博士の評伝を通じて、戦後を生きた人びとの真実もまた浮かび上がる。
(3)は、道元の難解な主著『正法眼蔵』を完璧に読み解く。緻密なテキスト解釈と論理構成が光る。従来の解釈があらかた誤りで、道元は仏性を実体視することに批判的だったとする。見事な読解だ。ただ正攻法すぎて容赦がない。かえって仏教界から無視されることだろう。残念である。
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