読書日記
夏休み企画(書評でGo on a Trip ! )日本:東日本編
世界各地を〈書評〉で巡る〈書評でGo on a Trip!〉企画、おまちかねの日本編は、東日本編と西日本編の2回に分けて紹介します!まずは東日本編(北海道・東北/関東/中部)です。
※Special Thanks!:書評推薦者 くるくるさん、hiroさん、こまつさん
北海道・東北にGo!
【北海道】
■川越 宗一『熱源』(文藝春秋)
評者:中島 京子明治維新を起点とした近代日本の前半部分、大日本帝国時代の歴史を、樺太=サハリンに生きる人々の目を通して綴る、壮大な歴史小説。(この書評を読む)
【北海道】
■中川 裕『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社)
評者:平松 洋子アイヌ固有の伝統文化、『ゴールデンカムイ』のオリジナルな物語、同時にふたつの世界へ誘い、きわめて風通しのいいおもしろさ。(この書評を読む)
【青森県】
■木村 友祐『幼な子の聖戦』(集英社)
評者:陣野 俊史青森県の小さな村で村議をしている「おれ」が主人公。人妻との不倫の証拠を摑(つか)まれた主人公はそれをネタにゆすられる。立候補した友だちの選挙を妨害するよう強要される。そして――。(この書評を読む)
【青森県】
■里中 満智子・中島 京子『かたづの!』(集英社)
評者:本郷 和人主人公は八戸南部家の姫、清心尼。江戸時代を通じ唯一の女性大名といわれる人物である(この書評を読む)
【岩手県】
■今野勉『宮沢賢治の真実 : 修羅を生きた詩人』(新潮社)
評者:石井 千湖知っているつもりだった文豪と未知の世界で再会できる冒険の書だ。(この書評を読む)
【岩手県】
■若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)
評者:鴻巣 友季子宮沢賢治の「永訣の朝」からタイトルを引いた『おらおらでひとりいぐも』は、七十四歳の女性を主人公にした、作者名づけて「玄冬小説」だ。もはや青春小説よりはるかに需要がありそうだし、ネーミングとセルフプロデュースの才に唸った。(この書評を読む)
【宮城県】
■伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)
評者:仲俣 暁生ケネディ大統領とビートルズ。一九六〇年代という時代を象徴するふたつの巨大なポップイコンを、一九七〇年代生まれの作家が、もの怖じもせずに作中に織り込む。それは「エンタテインメント小説」の書き手であることをプライドとともに引き受け、その枠組みのなかで最大限のことをやってやる、という宣言だと私は受け止めた。(この書評を読む)
【秋田県】
■石坂 洋次郎『青い山脈』(新潮社)
評者:高橋 源一郎素晴らしい。いま、こんな文章が書けますか。(この書評を読む)
【山形県】
■一志 治夫『庄内パラディーゾ―アル・ケッチァーノと美味なる男たち』(文藝春秋)
評者:平松 洋子はたして庄内は天国になりうるか。地方はあらたな息を吹き返すのか。もがきながら道を探る男たちの試みは、がけっぷちの日本に提示されたひとつの回答でもある。(この書評を読む)
【福島県】
■奈倉 哲三,保谷 徹『戊辰戦争の新視点 世界・政治』(吉川弘文館)
評者:加藤陽子旧幕側に立った会津・庄内両藩は、日本駐在北ドイツ連邦の外交官に、軍備・借款供与と引き替えに、蝦夷地99カ年租借の提案まで試みていた。(この書評を読む)
関東にGo!
【茨城県】
■貴志 祐介『新世界より』(講談社)
評者:大森 望物語の舞台は、利根川の下流に位置する神栖66町(現在の茨城県神栖市付近)。語り手は、結界に閉ざされたこの町で生まれ育った39歳の渡辺早季。(この書評を読む)
【茨城県】
■伊藤 純郎『特攻隊の〈故郷〉: 霞ヶ浦・筑波山・北浦・鹿島灘』(吉川弘文館)
前書き:伊藤 純郎海軍最初の特攻隊員は、筑波山を仰ぎ、霞ヶ浦で航空機搭乗員としての基礎教育を受けた土浦海軍航空隊予科練出身の二〇歳にも満たない少年たちであったのだ。(この書評を読む)
【栃木県】
■田村 紀雄・志村 章子『語りつぐ田中正造―先駆のエコロジスト』(社会評論社)
評者:森まゆみ『語りつぐ田中正造ー先駆のエコロジスト』は田中正造研究会の人々が、やはり彼に真摯な関心をもつ人々を訪ね歩いた聞き書き。といってもインタビュー集にありがちな浅薄さは毛ほどもない。問題を共有し響きあうのに、こうした形式がまさに必然であったことを感じさせる。(この書評を読む)
【群馬県】
■いとうせいこう『我々の恋愛』(講談社)
評者:小野 正嗣 もちろん、世界の様々な場所で日々書かれている小説のすべてを読むことなど誰にもできない。しかし世界そのものを肌身で感じながら、国境なき同時代文学の新しさ、面白さ、多様さを受信しようと意識的に自分をたえず開こうとする書き手はそれでもいる。その筆頭がいとうせいこうだろう。(この書評を読む)
【群馬県】
■若狭 徹『東国から読み解く古墳時代』(吉川弘文館)
評者:坂誥 秀一東国で火山灰に埋没した豪族館跡などが発掘され注目されている。古墳は見える遺跡として多くの人びとに関心があり、古墳ブームの感を呈している。そんな最中、東国の上毛野(かみつけの・現在の群馬県)の地で有力な古墳の主と同じ甲冑を着装した六世紀初め頃の人骨が榛名山の火山灰に埋もれた姿で発掘された。(この書評を読む)
【埼玉県】
■和田 竜『のぼうの城』(小学館)
評者:瀧井 朝世埼玉出身の一人として、地元にこんなヒーローがいたのか、とうれしくなりました(笑い)。県内の各書店にお話ししたところ、刊行直後から大々的に展開していただくことができ、月間1位を獲得した書店も。(この書評を読む)
【千葉県】
■ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』(早川書房)
評者:大森 望千葉市(チバ・シティ)でやさぐれている。そんなケイスの前に現れた女が、やがて彼を危険な仕事へと導く……。(この書評を読む)
【東京都】
■中沢 新一『アースダイバー』(講談社)
評者:松原 隆一郎縄文人は、入り江で貝の殻をまとめて捨てた。それが貝塚なのだが、さらに後に建てられた寺社や古代遺跡を書き込むとあら不思議、いずれも入り江の「岬」に位置しているのである。これはひょっとして、大発見なのではあるまいか。(この書評を読む)
【東京都】
■高橋 大輔『漂流の島: 江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』(草思社)
評者:平松 洋子舞台は鳥島。伊豆諸島南端に位置する直径2.7キロほどの無人島で、アホウドリの生息地として知られる。この島にはもうひとつの顔、つまり一七世紀後半から幕末にかけてジョン万次郎ほか総計約百名におよぶ漂流民の歴史があった。(この書評を読む)
【神奈川県】
■甘糟 幸子『楽園後刻』(集英社)
評者:種村 季弘舞台は鎌倉だが、いわゆる古都鎌倉ではない。上述の三人の女たちそれぞれの現実の生活の場、ということは、そこで生き、老い、死んでゆく場所としてのどこにでもあるどこかだ。(この書評を読む)
中部にGo!
【新潟県】
■瀬戸内 寂聴『秘花』(新潮社)
評者:平野 啓一郎世阿弥が晩年、聴力を失い、視力を失ってゆく様の静謐な描写には、彼を翻弄し続けたあらゆる移ろいゆくものからの涅槃的なゆるやかな遠ざかりが感じられ、印象深いが、その最期に口にする言葉には、読者を一気に『秘花』というタイトルへと直結させるような思いがけない手繰り寄せが仕掛けられている。(この書評を読む)
【富山県】
■木下 晋『いのちを刻む 〔鉛筆画の鬼才、木下晋自伝〕』(藤原書店)
評者:堀江 敏幸この本を読むと、木下晋の彫像のような鉛筆画は、どれも自分の背中に張り付いたものの正体を見極めるための営為なのではないかと思えてくる。(この書評を読む)
【石川県】
■高樹 のぶ子『白磁海岸』(小学館)
解説:高樹 のぶ子風土、と言う言葉は文字通り風と土。いずれも湿っているからこそ金沢は美しいのである。(この書評を読む)
【福井県】
■谷崎 由依『遠の眠りの』(集英社)
評者:中島 京子福井の百貨店に実在したという少女歌劇団に舞台を移すと、物語は大胆に跳躍する。(この書評を読む)
【山梨県】
■平川 南『地域に生きる人びと: 甲斐国と古代国家』(吉川弘文館)
評者:磯田 道史日本古代史は「中央」からみた律令政府史になりがちで、「地方」の実態は見過ごされがちであった。ところが近年、古代遺跡の発掘調査が進み、木簡や漆がかかった紙の文字=漆紙文書が発見され、これらをもとに、古代社会の地方のありようがかなり詳細に解明されつつある。(この書評を読む)
【長野県】
■丸島和洋『真田四代と信繁』(平凡社)
評者:磯田 道史真田信繁は最晩年まで信繁で幸村を称した形跡は確認できないと断定する。幸村と書いた書状は花押(サイン)が違うから偽文書と判定してそう結論する。(この書評を読む)
【岐阜県】
■古井由吉『半自叙伝』(河出書房新社)
評者:原 武史7歳の古井由吉が、赤々と燃えさかる大垣の町を慄(ふる)えながら眺めている。この体験こそ、たとえ40代になろうが70代になろうが、幼年の自己との間を無限に往復するこの作家の人生を宿命づけたのではないか。(この書評を読む)
【静岡県】
■杢代 哲雄『評伝 田畑政治: オリンピックに生涯をささげた男』(国書刊行会)
前書き:杢代 哲雄田畑さんは、静岡県浜名湖での水泳との結びつきからオリンピックの舞台に乗り出し、まさにオリンピックに生涯をかけた。(この書評を読む)
【愛知県】
■村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)
評者:栗原裕一郎したがって問題はこう書き換えることができるだろう。世代を違えた相似形の主題が二重写しでリフレインされているのは何故か、何を描こうとしているのかと。(この書評を読む)
【愛知県】
■久住 祐一郎『三河吉田藩・お国入り道中記』(集英社)
評者:磯田 道史本書は、1841年に、三河吉田(愛知・豊橋)藩が行った一回の参勤交代の細部を検証したもの。松平信宝という若殿様が、藩主の代わりに初めてお国入りすることになったが、几帳面な武士がいて、これでもかというほど緻密な記録を残しており、この研究が可能になった。(この書評を読む)
【三重県】
■梶 よう子『お伊勢ものがたり 親子三代道中記』(集英社)
評者:杉江 松恋『お伊勢ものがたり』の主人公は武家の奥方である香矢(かや)。彼女が母・まつと奔放な娘の雪乃に振り回されながら江戸から伊勢までを旅する物語だ。伊勢を目指す人々の群像劇にもなっているところが面白い。(この書評を読む)
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