書評
中島 京子「2024年 この3冊」毎日新聞|岡真理著『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房)、安田浩一著『地震と虐殺1923―2024』(中央公論新社)、奈倉有里著『文化の脱走兵』(講談社)
2024年「この3冊」
<1>岡真理著『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房)
<2>安田浩一著『地震と虐殺1923―2024』(中央公論新社)
<3>奈倉有里著『文化の脱走兵』(講談社)
パレスチナとウクライナから、頭が離れない1年だった。戦争、集団殺害。その根底にあるものは、遠い国の話ではないことも感じられて、重苦しい気持ちが去らない。<1>は、ガザで起こっていることを理解するために必要最低限の知識を与えてくれる。ともかく、ここから、という思いで、年頭に読んだ。
<2>は、著者が100年前の関東大震災直後に起こった虐殺の地を訪ね、あらためて事件を丁寧に掘り起こす。ヘイトクライムによる悲劇を二度と引き起こさないために、「記憶のバトン」を受け取る重要性を考えさせられた。
<3>は、ウクライナで戦争が始まった年に、ロシア文学者である著者が書き始めたエッセイ。引用されるロシアの詩がどれも心に沁みて、やわらかい気持ちになる。タイトルの「脱走兵」は、セルゲイ・エセーニンの反戦詩から。
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