コラム
斎藤 環「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>カール・エリック・フィッシャー『依存症と人類』(みすず書房)、<2>東畑開人『ふつうの相談』(金剛出版)、<3>蓮澤優『フーコーと精神医学』(青土社)
2023年「この3冊」
<1>カール・エリック・フィッシャー『依存症と人類』(みすず書房)
<2>東畑開人『ふつうの相談』(金剛出版)
<3>蓮澤優『フーコーと精神医学』(青土社)
<1>アルコール依存症当事者だった精神科医による、依存症史の決定版。依存症が病気と認定され「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」の誕生に至る正の歴史と、米連邦麻薬局の初代長官が主導した厳罰主義の弊害という負の歴史が対比的に描かれる。<2>著者によれば「専門知は世間知らずになりやすく、学派知は暴走しやすく、現場知は閉塞(へいそく)しやすい」。原理主義に抗してメタ視点から多様な臨床知を統合すること。そこに「ふつうの相談」が立ち上がる。
<3>大著『狂気の歴史』で反精神医学の旗手となったフーコーの晩年に、著者は特異な治療論を見出す。それは「自己の実践」という名の自己の解放であり、ただ一回の過程のもとで主体性を回復することだ。精神科医ならではの新鮮な視座が印象的な快著。
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