書評
『氷結の国 (1970年) (世界ロマン文庫〈13〉)』(筑摩書房)
昭和四十年代の半ばに筑摩書房から刊行された〈世界ロマン文庫〉全二十巻。異色の佳作がずらりと並ぶこの全集のなかでもとりわけ異色なのが、リチャード・ヒューズの『ジャマイカの烈風』とギルバート・フェルプスの本書である。前者は恐ろしいほどのおもしろさだが、ミステリのレッテルを貼るのはためらわれるので、ここでは本書について。アンデス山脈の奥深くに分け入った探検家が人跡未踏の謎の谷を発見する物語。一九六三年という近年に書かれながら正統硬派の秘境冒険小説である点が、まず立派としか言いようがない。しかも「冬眠する民族」という着想が、なんとも素晴らしい。こんな小説をよく探し出してきたものだ。
【この書評が収録されている書籍】
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