書評
『カラフル』(文藝春秋)
「おめでとうございます、抽選に当たりました!」。そう言って、死んだはずの“ぼく”の前に現れた優男風の天使。生前にあやまちを犯した“ぼく”は輪廻(りんね)のサイクルから外されたが、天使業界の抽選で選ばれ、再挑戦できることに。チャレンジ内容は、自殺未遂をした少年、小林真の体に「ホームステイ」して修行するというもの。が、この真、家庭でも学校でも深刻な悩みを抱えているようで……。
昨年直木賞を受賞して注目された森絵都さんの、第46回産経児童出版文化賞受賞作品。98年に理論社から出版された単行本は、今でも増刷がかかるロングセラーで、現在59刷22万部。加えてこの9月に文芸春秋から文庫版も刊行され、初版は異例の12万部。担当編集者が「単行本と同じ鮮やかなイエローにこだわった」と言う装丁は、書店でも目を引く。読者層は20代女性、30代女性、ついで10代男性の順。ネット書店のレビューでは「中高生に読んでもらいたい」「まわりにいる人の大切さを知った」という声が。
ヤングアダルト向けとはいえ、家庭不和、いじめ、不倫など、なまなましい問題が続々と出てくる本書。「子供はシビアな目で物事を見ている、だから児童書だといって内容を甘くはしない、というのが森さん。ただ、そんな厳しい内容を、独特のユーモアを交え、重くさせず描くところが森さんの魅力」と、担当編集者。醜い部分も書くからこそ、それでも人は前に進んでいける、と強く思わせてくれる。灰色だった小林真の日常が、“ぼく”の目を通して、また違うように見えてきた時、タイトルの意味が、じんわりと心に染みてくる。
昨年直木賞を受賞して注目された森絵都さんの、第46回産経児童出版文化賞受賞作品。98年に理論社から出版された単行本は、今でも増刷がかかるロングセラーで、現在59刷22万部。加えてこの9月に文芸春秋から文庫版も刊行され、初版は異例の12万部。担当編集者が「単行本と同じ鮮やかなイエローにこだわった」と言う装丁は、書店でも目を引く。読者層は20代女性、30代女性、ついで10代男性の順。ネット書店のレビューでは「中高生に読んでもらいたい」「まわりにいる人の大切さを知った」という声が。
ヤングアダルト向けとはいえ、家庭不和、いじめ、不倫など、なまなましい問題が続々と出てくる本書。「子供はシビアな目で物事を見ている、だから児童書だといって内容を甘くはしない、というのが森さん。ただ、そんな厳しい内容を、独特のユーモアを交え、重くさせず描くところが森さんの魅力」と、担当編集者。醜い部分も書くからこそ、それでも人は前に進んでいける、と強く思わせてくれる。灰色だった小林真の日常が、“ぼく”の目を通して、また違うように見えてきた時、タイトルの意味が、じんわりと心に染みてくる。
朝日新聞 2007年11月18日
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