書評
『『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション』(実業之日本社)
明治41年から昭和30年まで、女学生たちに人気を博した雑誌「少女の友」。その創刊100周年記念号が版を重ねている(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2009年)。
かつての記事のほか、雑誌の歴史や愛読者だった田辺聖子さんらのインタビューなどを収録。当時の執筆陣は川端康成、堀口大学や中原中也らと豪華で、小説、詩のほかに名画の紹介、海外ルポもあり総合誌の印象。「少女たちに視野を広く持ち、自分が輝ける何かを持ち続けて、というメッセージが伝わってきます」と担当編集者の藤森文乃さん。口絵や付録の美しさもため息が出るほどで、作り手の心意気が感じられる。
初版部数の5千部は版元としては冒険だった。が、注文が相次いで刊行前に重版が決定。購買層は元読者の80代前後、その娘世代の60代前後、そして乙女文化好きの20〜30代の女性たち。愛読者カードにグッときた。「昨年夫を亡くして一人暮らしになった灰色の世界が(中略)急に華やかになりました」(70代)、「病床の母に贈ったら顔を輝かせました」(60代)、「100年も前に、こんなにポップでキュートな雑誌が出ていたなんて!」(20代)などなど。「雑誌の黄金期は昭和10年代。その後の戦争や混乱を体験した方々にとって、幸福な時代の思い出のパートナーであるようです」ともう一人の担当編集者、岩野裕一さん。
雑誌が「友」でありえたのには世相もある。加えて、編集者も執筆してカリスマ的な人気を誇ったこと、投稿欄が充実し、読者の会が開かれるなど雑誌と読み手の結びつきが強固だったことも要因だろう。伝える側、受け取る側の純粋さ、善良さがひしひしと感じられ、雑誌というもののあり方について考えさせられる。
今後『中原淳一 昭和の付録 お宝セット』も発売予定で、こちらも予約が相次ぐ。乙女たちの胸の高鳴りはまだまだやまない。
かつての記事のほか、雑誌の歴史や愛読者だった田辺聖子さんらのインタビューなどを収録。当時の執筆陣は川端康成、堀口大学や中原中也らと豪華で、小説、詩のほかに名画の紹介、海外ルポもあり総合誌の印象。「少女たちに視野を広く持ち、自分が輝ける何かを持ち続けて、というメッセージが伝わってきます」と担当編集者の藤森文乃さん。口絵や付録の美しさもため息が出るほどで、作り手の心意気が感じられる。
初版部数の5千部は版元としては冒険だった。が、注文が相次いで刊行前に重版が決定。購買層は元読者の80代前後、その娘世代の60代前後、そして乙女文化好きの20〜30代の女性たち。愛読者カードにグッときた。「昨年夫を亡くして一人暮らしになった灰色の世界が(中略)急に華やかになりました」(70代)、「病床の母に贈ったら顔を輝かせました」(60代)、「100年も前に、こんなにポップでキュートな雑誌が出ていたなんて!」(20代)などなど。「雑誌の黄金期は昭和10年代。その後の戦争や混乱を体験した方々にとって、幸福な時代の思い出のパートナーであるようです」ともう一人の担当編集者、岩野裕一さん。
雑誌が「友」でありえたのには世相もある。加えて、編集者も執筆してカリスマ的な人気を誇ったこと、投稿欄が充実し、読者の会が開かれるなど雑誌と読み手の結びつきが強固だったことも要因だろう。伝える側、受け取る側の純粋さ、善良さがひしひしと感じられ、雑誌というもののあり方について考えさせられる。
今後『中原淳一 昭和の付録 お宝セット』も発売予定で、こちらも予約が相次ぐ。乙女たちの胸の高鳴りはまだまだやまない。
朝日新聞 2009年5月17日
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