書評
『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』(柏書房)
まず〈メソポタミア風だしを作る〉という一行に目を瞠(みは)った。古代メソポタミアにもだしがあったことに驚き、親近感がわく。本書は紀元前4世紀頃のオリエントから19世紀のヨーロッパまで、八つの時代の料理を史料に基いて再現したレシピエッセイ集だ。現代人向けに作り方をアレンジしているだけではなく、各メニューの時代背景を解説した文章も読み応えがあり、1ページ1ページが発見に満ちている。
例えばチャプター4の「リチャード3世の愉しみ」。2012年に発掘されたリチャード3世の遺骨の話を糸口にして、15世紀イングランドの食事情を紹介する。中世といえば暗黒時代のイメージがあるけれど、宮廷料理に関しては品数も多く派手な色彩で、むしろ〈キラキラ時代〉だったらしい。
史料の情報だけだとスパイスを大量に使用した見栄え重視の料理で味には期待できそうもないのに、著者は〈中世料理はおいしいんです!〉と断言する。実際に本書のレシピを見てマーメニーというシチューを作ってみたら、優しい味わいで家族にも好評だった。もちろん当時そのままの味ではないだろうが、食べてみることで時間も場所も遠く隔てた世界との距離が少し縮められる気がする。
チャプター7の「ユーゴーのごちそう会」は、フランス革命が食に与えた影響について書かれていて興味深い。主人を失った元宮廷料理人がレストランを開くことによって食文化発展の中心は民間に移った。また、フランスがアルジェリアを侵略したことで、クスクスをはじめとした現地の食品が入ってきたという。人々の食生活を細かく観察してみると、その社会のあり方が見えてくるのだ。
例えばチャプター4の「リチャード3世の愉しみ」。2012年に発掘されたリチャード3世の遺骨の話を糸口にして、15世紀イングランドの食事情を紹介する。中世といえば暗黒時代のイメージがあるけれど、宮廷料理に関しては品数も多く派手な色彩で、むしろ〈キラキラ時代〉だったらしい。
史料の情報だけだとスパイスを大量に使用した見栄え重視の料理で味には期待できそうもないのに、著者は〈中世料理はおいしいんです!〉と断言する。実際に本書のレシピを見てマーメニーというシチューを作ってみたら、優しい味わいで家族にも好評だった。もちろん当時そのままの味ではないだろうが、食べてみることで時間も場所も遠く隔てた世界との距離が少し縮められる気がする。
チャプター7の「ユーゴーのごちそう会」は、フランス革命が食に与えた影響について書かれていて興味深い。主人を失った元宮廷料理人がレストランを開くことによって食文化発展の中心は民間に移った。また、フランスがアルジェリアを侵略したことで、クスクスをはじめとした現地の食品が入ってきたという。人々の食生活を細かく観察してみると、その社会のあり方が見えてくるのだ。
週刊金曜日 2017年8月25日
わたしたちにとって大事なことが報じられていないのではないか? そんな思いをもとに『週刊金曜日』は1993年に創刊されました。商業メディアに大きな影響を与えている広告収入に依存せず、定期購読が支えられている総合雑誌です。創刊当時から原発問題に斬り込むなど、大切な問題を伝えつづけています。(編集委員:雨宮処凛/石坂啓/宇都宮健児/落合恵子/佐高信/田中優子/中島岳志/本多勝一)
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