書評
『そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質』(祥伝社)
著者は前作『マンガ産業論』で、世界的にも稀(まれ)な日本マンガの成功の秘密を、社会経済史的にじつにすっきりと解明してみせた。本書でも、その持ち味である明快さは保たれている。
鉄腕アトムは天馬博士に発明された。博士は死んだ息子・トビオが忘れられず、息子そっくりのロボット・アトムを創ったのだ。だが、背が伸びないアトムは、ついに博士から「お前はトビオではない」と宣告され、サーカスに売り飛ばされる。
アトムのこのアイデンティティーの喪失を、著者は敗戦日本人の自己崩壊と重ねあわせる。そして、手塚マンガを、戦後日本の物質的・精神的変化の反映として丹念に読み解いていく。
一見単純な視点だが、平明な論述を追ううちに、なるほど手塚マンガは日本人の鏡だったのだなという重い感慨が湧(わ)き、手塚の遺作『グリンゴ』を論じる最終章では、「じゃ…日本人てのは一体なんなのだーッ」という主人公の叫びが我々の心に突き刺さるのである。
鉄腕アトムは天馬博士に発明された。博士は死んだ息子・トビオが忘れられず、息子そっくりのロボット・アトムを創ったのだ。だが、背が伸びないアトムは、ついに博士から「お前はトビオではない」と宣告され、サーカスに売り飛ばされる。
アトムのこのアイデンティティーの喪失を、著者は敗戦日本人の自己崩壊と重ねあわせる。そして、手塚マンガを、戦後日本の物質的・精神的変化の反映として丹念に読み解いていく。
一見単純な視点だが、平明な論述を追ううちに、なるほど手塚マンガは日本人の鏡だったのだなという重い感慨が湧(わ)き、手塚の遺作『グリンゴ』を論じる最終章では、「じゃ…日本人てのは一体なんなのだーッ」という主人公の叫びが我々の心に突き刺さるのである。
朝日新聞 2005年7月17日
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