書評
『美と王妃たち』(河出書房新社)
本邦初訳、コクトーのエッセー二篇(へん)を収める。落穂拾いではない。文化史への言及と詩的暗示が多く、難しい文章なのだが、訳者は解説をたっぷり加えて困難を乗りきり、貴重かつ読み応え十分な一冊となった。
前半は「フランスの王妃たち」。といっても、ジャンヌ・ダルクからサラ・ベルナールまで、実際の王妃に限らず、十九人の女傑を集めている。コクトーは偉大な俳優を「聖なる怪物」と呼んだが、これはコクトー一流の「聖なる怪物」列伝なのである。訳者解説とあわせれば、中世から現代に至るフランス女性史の外伝としても面白く読める。
後半は「暗殺として考えられた美術」。シュルレアリストが批判したキリコの擁護から出発して、美の観念を飛躍の多い断章形式で論じている。サルトルがジュネ論で引用した有名なウッチェルロの挿話が含まれるのはこのエッセーであり、これは遠近法の魔術的性格を示唆する最も重要な一文といえるだろう。
前半は「フランスの王妃たち」。といっても、ジャンヌ・ダルクからサラ・ベルナールまで、実際の王妃に限らず、十九人の女傑を集めている。コクトーは偉大な俳優を「聖なる怪物」と呼んだが、これはコクトー一流の「聖なる怪物」列伝なのである。訳者解説とあわせれば、中世から現代に至るフランス女性史の外伝としても面白く読める。
後半は「暗殺として考えられた美術」。シュルレアリストが批判したキリコの擁護から出発して、美の観念を飛躍の多い断章形式で論じている。サルトルがジュネ論で引用した有名なウッチェルロの挿話が含まれるのはこのエッセーであり、これは遠近法の魔術的性格を示唆する最も重要な一文といえるだろう。
朝日新聞 2004年7月11日
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