書評
『政治: 個人と統合』(東京大学出版会)
多元化する個人を改めて導く
「政治」とはいったい何だろうか。床屋政談とも言うように日常誰でもが口の端に上らせる気楽な存在でもあり、しかしまた国内はおろか国と国との対立抗争から戦争にまでいたるえらく複雑怪奇で遠い存在でもある。言い換えると、何とも捉(とら)えどころがなくつかまえたと思っても手からするりと抜けてしまう、そんな存在に他ならない。人は誰でも、こんな「政治」について統一したイメージを持ちたい、あるいは「政治」を見るための適切な手がかりが欲しいと思うに違いない。そこに四半世紀ぶりに装いも新たに『政治』の第2版が出された。著者の三人は、今はもう学界の長老となったいずれも戦後育ちの政治学者である。
これに先立つ初版は、大学紛争を未だ経験せぬ高度成長期の日本を背景とした所産であった。そこで第2版は、初版の各章の隅々にまで気を配って全体をアップ・トゥ・デートに書き改め、国際社会に関する一章を加えた構成となっている。初版にあった「先進国イギリス」「後進国日本」という表現が、第2版では削除されている点などに、この間の時代の移り変わりを見ることは充分に可能だ。
しかし「政治」を個人と統合の二つの方向の異なるベクトルの緊張関係と捉え、「政治」に関する諸制度を「理念型」にそくして歴史的に説明する視座は、まったく変わらない。組織化・情報化が不可避の現代社会にあって、大衆化・多元化する個人が、過度な思い入れと冷ややかな突き放しという両極端の態度に分化して「政治」に臨むことを、著者たちは最も懸念している。
エコロジー問題に見られるように日常生活の「政治化」が進んだ今、政治制度と政策とを漸進的に変化させる日常的な働きかけこそが、「政治」への態度として望ましい。その意味で本書は、「政治」に対してナイーブな青年層と「政治」へのあきらめに満ち満ちた老年層とに、改めて「政治」への接近を促す導きの書となろう。
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