書評

『地鳴き、小鳥みたいな』(講談社)

  • 2025/12/06
地鳴き、小鳥みたいな / 保坂 和志
地鳴き、小鳥みたいな
  • 著者:保坂 和志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(226ページ)
  • 発売日:2016-10-27
  • ISBN-10:4062202875
  • ISBN-13:978-4062202879
内容紹介:
独特の文章で、愛猫のこと、土地の記憶、過去のできごと、哲学的な思索、生を描くなかでの死の気配などが綴られる魅力の最新短篇集。

小さな記憶縫い合わせる

著者、久しぶりの短篇(ぺん)集。4篇を収める。

保坂和志さんの小説は、長篇『未明の闘争』以後、さらに先鋭化しているように感じてきた。唐突に(やや日本語の文法を逸脱して?)挟まれる「私は」の言葉、独特の句読点の打ち方。

たとえば冒頭に置かれた「夏、訃報、純愛」。いちばん短い小篇では、死んだ知り合い、猫、仕事で一度飲んだだけの「先生」の記憶のきれぎれが、縫い合わせるように語られる。

けっしてなめらかな文章ではない。だが、私たちの記憶は、少し違和感を醸すような、この文体みたいに繋(つな)がれているはず。読後、奇妙な感覚が残る。

保坂和志は、小説家が書いたことのない未踏の領域にいる。


地鳴き、小鳥みたいな / 保坂 和志
地鳴き、小鳥みたいな
  • 著者:保坂 和志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(226ページ)
  • 発売日:2016-10-27
  • ISBN-10:4062202875
  • ISBN-13:978-4062202879
内容紹介:
独特の文章で、愛猫のこと、土地の記憶、過去のできごと、哲学的な思索、生を描くなかでの死の気配などが綴られる魅力の最新短篇集。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2016年11月17日

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