書評
『夜を聴く者』(河出書房新社)
新たなキャラクター小説開拓
2篇を収める。表題作には、主として3人の登場人物しか出てこない。ミハイは鍼灸(しんきゅう)師。彼の中学からの友人トウヤは、ソーシャルゲームを開発する会社に勤めている。トウヤには綾鳥こずえという恋人がいる。ミハイとトウヤは高校をドロップアウトした後、なんとなく相手を必要としながら生きてきた。そこへこずえが介入してきた――という構図。
同性愛と異性愛がぶつかり合う瞬間がある。友情と恋愛の衝突がある。そう単純化して言ってしまえば、小説の味わいとは違う感じもあるが、トウヤをめぐってミハイとこずえがぶつけ合う言葉に、この作家の小説の真骨頂を見た。
キャラクター小説の新たな地平。
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