野崎 歓KAN NOZAKI
公式サイト: http://www.l.u-tokyo.ac.jp/teacher/database/170.html

1959年、新潟県生まれ。東京大学文学部卒、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、放送大学教授、東京大学名誉教授フランス文学研究のほか映画評論、文芸評論、エッセイなど幅広く手がけている。著書に『ジャン・ルノワール 越境する映画』(青土社、サントリー学芸賞)、『赤ちゃん教育』(青土社、講談社エッ…もっと読む


女が戦地に赴くとき私は兵隊が好きだ。/あらゆる姑息を吹きとばし/荒涼たる土に血をさらすとも、/民族を愛する青春に噴きこぼれ、/旗を背負つて…


批評家は母の夢を見る母なるもの、その語りにくさはだれしも感じるところだろう。そもそも肉親を語るのには照れ臭さが伴うが、父親や兄弟姉妹にも増…


さまよえる魂ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』といえば、モダンな怪談として屈指の傑作に違いない。『抱擁』を開く前に久方ぶりに再読し、間然…


地図が領土になるとき目が醒めてから再び眠りに就くまでのあいだ、今日も「君子危うきに近寄らず」は辛抱強く待ち続けていた。書き出しの一文であ…


女が戦地に赴くとき私は兵隊が好きだ。/あらゆる姑息を吹きとばし/荒涼たる土に血をさらすとも、/民族を愛する青春に噴きこぼれ、/旗を背負つて…


神秘としての他者これまで、青山七恵氏の作品に目を通したことがなかった。近作三篇を収めた『かけら』を一読して唸り、さっそく『ひとり日和』を取…


エクリチュールの白魔術記者会見での著者の不機嫌が話題を呼んだが、作品自体はじつに人を食った面白さが横溢している。優雅かつ周到にして不謹慎き…


女は世界の奴隷か三人のまだ年若い母親たち。一人は、連載の原稿に追われる女性作家。夜遊びに繰り出したり、ドラッグに手を出したり、いささか素行…


温かさを分け与えてくれる書物『転がる香港に苔は生えない』という、名著と呼ぶほかはない一冊によって星野博美と出会った人間にとって、星野作品は…


「暮らし」をつなぎとめる小説四百数十ページの分厚い一巻だが、長さが少しも負担にならないばかりか、不思議なくらいすいすいと読めてしまう。単に…


玉響(たまゆら)の批評的享楽次々と意欲的な翻訳の仕事を手がける著者の、ワインに寄せる愛情の深さに驚かされた。単に好きだとか、詳しいといった…


光の体験じつに孤独な主人公、「冬子」の物語である。社会と完全に切れてしまっているわけではない。しかしフリーランスの校閲者という仕事ゆえ、依…


映画の核心に迫る分析の冴え旺盛な研究・批評活動を続けながら若くして逝った著者の、映画をめぐる遺稿をまとめた論集である。ジェンダー論、精神分…


「緑の妖精」と芸術 民衆や政治伝説の酒、アブサン。エメラルド色に輝くその液体は、人呼んで「緑の妖精」。水を加えればあら不思議、白濁してオパ…


理想を追い続ける編集者の志2代にわたり出版者として名を馳(は)せたシフリン親子の、息子による回想記である。父は第2次大戦前、フランスで大作家…


宝物のありか子供だけが、現実に生きることを知っている。大人はただ幻想の中で生きるだけだ。オーストリアのある小説家がそんなふうに書いていた。…


空想と人生三十を過ぎて定職をもたず、バイトも長続きせず、築四十三年の借家の自室に寝ころがって、午後の奥様向け情報番組をゆるゆると観る。そん…


ディストピアを悦ばしく生きる大災害により、自然も社会も取り返しのつかない損害を受けてしまったのちの物語である。日本は鎖国の道を選び、政府は…


愉悦に満ちたモンテーニュ保苅瑞穂は何よりもまず、『失われた時を求めて』をめぐってこのうえなく透徹した本を書いた人である(『プルースト・印象…


歓待の精神人間と動物のつきあいは、かつてはかなり、実利的な性格を帯びていたのではないだろうか。人は動物を使役することで自らの労苦を軽減し、…