コラム
鹿島茂|2016年今年の三冊『家族システムの起源 1ユーラシア』『ヒトラー』『1493 世界を変えた大陸間の「交換」』
<1>家族システムの起源 1ユーラシア 上・下 エマニュエル・トッド著、石崎晴己監訳(藤原書店・(上)4536円(下)5184円)
<2>ヒトラー 上・下 イアン・カーショー著、石田勇治監修、川喜多敦子、福永美和子訳(白水社・(上)8640円(下)1万1880円)
<3>1493 世界を変えた大陸間の「交換」 チャールズ・C・マン著、布施由紀子訳(紀伊國屋書店・3888円)
ブレグジット(英国のEU離脱)、トランプ米大統領誕生など、二〇一六年は後世の歴史家から事実上の二一世紀の始まりの年とされるかもしれないが、出版不況の激化という点で活字階級・非活字階級の対立元年として記憶されるだろう。娯楽・情報系はすべて電脳に吸収され、知識・思想・純文学だけが活字に残るに違いない。上記三冊はこの傾向を如実に示す大著。
<1>は家族人類学を踏まえずして今後、歴史は語りえないことを例証したトッドの野心作。構造から歴史への大転換である。
<2>はこれからのディケイドを席巻するだろう独裁者の基礎研究に欠かせない決定版伝記。独裁者は常に大衆のルサンティマンの霊媒(メディウム)として機能する。
<3>はそれでも歴史は目に見えない「交換」によって動いていくことを示す好著。悪い方の交換にならなければよいのだが。
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