書評
鴻巣 友季子「2024年 この3冊」毎日新聞|平中悠一『「細雪」の詩学: 比較ナラティヴ理論の試み』(田畑書店)、阿部賢一『翻訳とパラテクスト: ユングマン、アイスネル、クンデラ』(人文書院)、高遠弘美『楽しみと日々: 壺中天書架記』(法政大学出版局)
2024年「この3冊」
<1>『「細雪」の詩学: 比較ナラティヴ理論の試み』平中悠一著(田畑書店)
<2>『翻訳とパラテクスト: ユングマン、アイスネル、クンデラ』阿部賢一著(人文書院)
<3>『楽しみと日々: 壺中天書架記』高遠弘美著(法政大学出版局)
<1>目の覚めるような文芸評論研究の書。今年断トツだった。谷崎潤一郎『細雪』をナラションの面から仔細、緻密に分析、解説、評論した書だが、一作家一作品のモノグラムの範疇を超えて日本語の本質、近代日本語とその小説言語の成立と、日本語話者の精神機構をも解明する詩学論であり比較文学論と言える。
<2>翻訳の不等価性、不均衡性を掘りさげた、チェコ文学者による稀有な研究書だ。翻訳とは二言語間の水平移動ではないことがわかる。ヨゼフ・ユングマン、パヴェル・アイスネル、クンデラの仕事をパラテクストという視点からつぶさに解明する。
<3>高遠弘美の書くものは韻文であれ散文であれ、エセーであれ評論であれ翻訳であれ、すべてが詩である。数千年の時を超えた詩人たちの交感の声が聞こえる。
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