書評
中島京子「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)、<2>王安憶『長恨歌』(アストラハウス)、<3>高野秀行『イラク水滸伝』(文藝春秋)
2023年「この3冊」
<1>津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
<2>王安憶『長恨歌』(アストラハウス)
<3>高野秀行『イラク水滸伝』(文藝春秋)
<1>毒親から逃れ粉ひき水車小屋のあるおそば屋さんで働き始めた高卒の姉と、小学生の妹。ヨウムのネネに見守られた姉妹の四十年は、血縁ではない人々がつむぐ静かで勁(つよ)い繋がりの物語。引用したいセリフ満載の、心に沁(し)みる小説。
<2>一九四〇年代初頭、「上海のお嬢さん」王琦瑶が映画スターを目指して撮影所を訪れる。繁栄、戦争、建国、文革から「改革開放」で上海が再び資本主義に呑み込まれる直前までを、都市とひとりの女性の物語として描き出す、現代中国文学の傑作。
<3>辺境作家が訪れるイラクの<アフワール>は、古来、権力に迫害されたマイノリティーやアウトローが逃げ込む謎の巨大湿地帯。そこで行き当たりばったりに展開される冒険譚が、まあ、深い沼。ハマったら抜け出せないおもしろさ。
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