
徹底的なリサーチにより事実を追った話題作
素晴らしいミステリというのは、本質的に、解決に必要な手がかりをすべて与えながらも、見る者を途方に暮れさせる入り組んだ謎解きである。私が一番好きなミステリドラマは『刑事コロンボ』だ。皮肉なことに、多くの人は『刑事コロンボ』をミステリだと思わない。なぜなら伝統的な解決――殺人者の正体――は通常、最初のコマーシャルの前に明かされるからだ。
私に言わせれば、『刑事コロンボ』のほうが優れている。視聴者を有利なスタートに立たせてくれるからだ。エルキュール・ポワロやジェシカ・フレッチャーは、一見、偽の手がかりを追うのに多大な時間を費やしながら、その思考過程はたいてい、最後に明かされるまで視聴者には秘密にされる。そしてようやく、探偵役はそれぞれの手がかりを特定し、それについて説明するのだ。かたや『刑事コロンボ』ではずっと明かされている。私たちはカンニングペーパーを持ったクレイマー刑事で、コロンボと一緒に行動しながらも、一歩遅れている。私たちはその巧妙さと――ピーター・フォークの人を魅了する人物描写のおかげで――解決に至る面白さに舌を巻く。彼は腕まくりをし、スローモーションで、熟練の手管を見せる魔術師なのだ。
(本書『序』より)
春が来るたびに決まって、ピーター・フォークは猫がネズミをいたぶるようなゲームを始め、ユニバーサル・テレビジョン、『刑事コロンボ』のプロデューサー、番組を放映するテレビネットワークのNBCをおもちゃにする。マスコミのインタビューで、フォークはこの人気シリーズに出演するのは今シーズンが最後だろうとほのめかす。長時間にわたる狂乱的な制作スケジュールは、健康と家庭生活をむしばみつつある。いい脚本も十分にない。そして単純に、映画の仕事の関係で定期契約を結べる時間がない。(本文より)
脚本の妙、個性的な風貌、印象的なセリフでミステリファンの心をとらえて離さないドラマ「刑事コロンボ」。主演俳優ピーター・フォークについてのみならず、監督、脚本家などの証言をもとに、ドラマの舞台裏まで網羅した一冊。
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