書評

『どうしてこんなところに』(双葉社)

  • 2026/07/09
どうしてこんなところに / 桜井 鈴茂
どうしてこんなところに
  • 著者:桜井 鈴茂
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:文庫(400ページ)
  • 発売日:2016-09-15
  • ISBN-10:4575519251
  • ISBN-13:978-4575519259
内容紹介:
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか?自殺するべきか?いや、しかし、でも…。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。北は稚内から南は沖縄まで全国をさまよい歩く。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか?そして、最後に下した決断は―。

純文学・エンタメの領域を超越

主人公の久保田輝之は、妻を殺してしまった。妻や娘に生活の苦労をかけないよう、久保田は所属していた劇団をやめて仕事に就いた。だが夫婦関係は冷え切っていた。妻にはヤクの密売をする執念深い愛人がいた。

輝之は日本各地を転々とする。東京を離れ、新潟、青森、函館、札幌、稚内と北に流れ、石巻、仙台を経て、四国、近畿、九州、そして沖縄へと逃亡する。「逃亡」というよりも、延々と移動している感じだ。

自殺しようとした。だが果たせなかった。行く先々で希薄だが他人とのつながりもできる。2年と4カ月。輝之はなぜ移動するのか。はっきりとした理由はない。

それほど恵まれた人生ではない。だが悲惨な暮らしというわけでもない。輝之の内面は綴(つづ)られてはいるけれども、犯罪者の心理に迫るといった筆致でもない。

そう考えてくると、著者の桜井がやろうとしていることが見えてくる。つまり、人間の内面を掘り下げる「純文学」を目指しているのでもなければ、逃亡生活をスリリングに描く「エンタメ」を書きたいのでもない。それらのカヴァーしていない領域に踏み込んでいる。
どうしてこんなところに / 桜井 鈴茂
どうしてこんなところに
  • 著者:桜井 鈴茂
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:文庫(400ページ)
  • 発売日:2016-09-15
  • ISBN-10:4575519251
  • ISBN-13:978-4575519259
内容紹介:
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか?自殺するべきか?いや、しかし、でも…。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。北は稚内から南は沖縄まで全国をさまよい歩く。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか?そして、最後に下した決断は―。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2014年9月3日

ALL REVIEWS 書評講座(オンライン受講) ≫オンラインで参加する
現地満席|オンライン参加OK
「読む」側から、 「書く」側へ。
オンライン参加OK/過去回アーカイブ付。
全12回・途中申込OK。豪華講師陣の書評講座、開催中。
  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ