書評
『輝ける星の下に』(河出書房新社)
橋本治氏は思いのままに文体を操る。24色のクレヨンのようだ。どんな時代のどんな人生でも描けてしまう。創作がとても職人的な仕事なのだ。人間という生き物に洞察と哀惜と諦念の混じった眼差(まなざ)しを注ぐ。じんわりと温かい読後感が残る。
本書は単著に未収録の短編を集めた。「異邦人」はカミュ原作を落語に脚色。長屋の隠居に急(せ)かされ、ムル三(そう)が大森駅前からモロッコ行きバスに乗るドタバタ劇だ。「歌姫」は寂れたスナックで元歌手と常連客たちが過ぎた時間を回想する。「対話型対戦ゲーム『ネゴシエーター』」は近隣の迷惑住民を説得するおバカゲームの実況。「輝ける星の下に」は≪人生にいいことはなにもなかった≫中年の主人公が、自殺未遂の中学生を救い自分も救われる話。独特の空気感の橋本ワールド全開だ。
編者の千木良悠子氏は仕事で橋本氏の作品を読み進むうち、未読の短編を多くみつけて本書を企画した。橋本氏は源氏物語、平家物語をはじめ謡曲、浄瑠璃、歌舞伎、落語、江戸明治の大衆文学、学者文体、女子高生語まで脳内に収めた、生成AI顔負けの不世出の達人だ。その手際をぜひ心ゆくまで堪能あれ。追悼。
本書は単著に未収録の短編を集めた。「異邦人」はカミュ原作を落語に脚色。長屋の隠居に急(せ)かされ、ムル三(そう)が大森駅前からモロッコ行きバスに乗るドタバタ劇だ。「歌姫」は寂れたスナックで元歌手と常連客たちが過ぎた時間を回想する。「対話型対戦ゲーム『ネゴシエーター』」は近隣の迷惑住民を説得するおバカゲームの実況。「輝ける星の下に」は≪人生にいいことはなにもなかった≫中年の主人公が、自殺未遂の中学生を救い自分も救われる話。独特の空気感の橋本ワールド全開だ。
編者の千木良悠子氏は仕事で橋本氏の作品を読み進むうち、未読の短編を多くみつけて本書を企画した。橋本氏は源氏物語、平家物語をはじめ謡曲、浄瑠璃、歌舞伎、落語、江戸明治の大衆文学、学者文体、女子高生語まで脳内に収めた、生成AI顔負けの不世出の達人だ。その手際をぜひ心ゆくまで堪能あれ。追悼。
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