書評
『モルヒネ』(祥伝社)
「うずくまって泣きました」。ピンクの蛍光色で書かれた、シンプルなPOP。昨年の秋、全国の書店で本書にこの札が添えられてから勢いづき、36万部を突破した。
仕掛け人は丸善お茶の水店の吉海裕一さん。「辛(つら)いことが、非常に静謐(せいひつ)な文章で書かれている、そのギャップに惹(ひ)かれた。女性読者にアピールするよう、文字をこの色にしました」。夏にお茶の水店でPOPを立てると、数週間のうちに200冊が売れた。それを知った版元が吉海さんのPOPを印刷、全国の書店に配布。これを置くか置かないかで売れ行きがまったく違うため、関係者からは「魔法のPOP」と呼ばれ、一時期は帯にもこの文字を使用した。
主人公は、父親の暴力が引き起こした事件により、心に深い傷を負った女性医師。在宅医療に携わる彼女の前に、7年前に突然姿を消した元恋人が現れる。……末期癌(がん)患者となって。
幼児虐待、終末医療、在宅看護。登場人物たちが背負うものは、あまりにも重い。「泣ける本が読みたい」と安易な気持ちで手に取ると、途中で息苦しくなりそう。でもだからこそ、丁寧に読めば、胸に鋭く突き刺さってくるものがある。
「『どうせお涙頂戴(ちょうだい)の話だろうと思って読んだら、本当にいい作品だった』という声も。読者の7割以上が30〜40代の女性。『モルヒネ』というタイトルにピンとくるようで、終末医療にかかわる読者も多い」と、担当編集者の山田剛史さん。
ただ重いだけではなく、ラストには希望がある。元恋人がなぜ7年ぶりに会いにきたのか。彼の真意を知った時、熱いものがこみ上げてくる。
仕掛け人は丸善お茶の水店の吉海裕一さん。「辛(つら)いことが、非常に静謐(せいひつ)な文章で書かれている、そのギャップに惹(ひ)かれた。女性読者にアピールするよう、文字をこの色にしました」。夏にお茶の水店でPOPを立てると、数週間のうちに200冊が売れた。それを知った版元が吉海さんのPOPを印刷、全国の書店に配布。これを置くか置かないかで売れ行きがまったく違うため、関係者からは「魔法のPOP」と呼ばれ、一時期は帯にもこの文字を使用した。
主人公は、父親の暴力が引き起こした事件により、心に深い傷を負った女性医師。在宅医療に携わる彼女の前に、7年前に突然姿を消した元恋人が現れる。……末期癌(がん)患者となって。
幼児虐待、終末医療、在宅看護。登場人物たちが背負うものは、あまりにも重い。「泣ける本が読みたい」と安易な気持ちで手に取ると、途中で息苦しくなりそう。でもだからこそ、丁寧に読めば、胸に鋭く突き刺さってくるものがある。
「『どうせお涙頂戴(ちょうだい)の話だろうと思って読んだら、本当にいい作品だった』という声も。読者の7割以上が30〜40代の女性。『モルヒネ』というタイトルにピンとくるようで、終末医療にかかわる読者も多い」と、担当編集者の山田剛史さん。
ただ重いだけではなく、ラストには希望がある。元恋人がなぜ7年ぶりに会いにきたのか。彼の真意を知った時、熱いものがこみ上げてくる。
朝日新聞 2007年10月7日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
ALL REVIEWSをフォローする