書評

『LOVE』(新潮社)

  • 2026/05/09
LOVE  / 古川 日出男
LOVE
  • 著者:古川 日出男
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(387ページ)
  • 発売日:2010-03-29
  • ISBN-10:4101305315
  • ISBN-13:978-4101305318
内容紹介:
家庭に居場所を得られず自転車を駆って遠征する少年、学校になじめず都バスに乗って往還する少女、超能力を持つ老女、ストリートミュージシャン、殺し屋、そして多くの野良猫。直感だけを生きる指針にして東京を疾走する者たちの、熱い鼓動がシンクロする-邂逅と別離のリンクから生まれるドラマを、軽やかなビート感にのせて鮮烈に描き、読書界を沸騰させた青春群像小説の傑作。

土地描き出す才能に瞠目

東京をスケッチした小説集。だが、凡百の写生小説とはまったく違う。まず、語り手の視点が透明だ。いちおう「おれ」が語り手になって登場人物を記述しているようにも見えるが、いつの間にか、登場人物の一人称が小説を支配していたり、別の人物の内面が語られていたりする。普通、これだけいろんな人物が出てきて、語りの視点を交換すれば、小説はハチャメチャになるのに、破綻がないところは凄(すご)い。

それから本書では東京の目黒から五反田、品川を徘徊(はいかい)する人と猫が描かれているけれど、彼らがどんな人物で、どんな暮らしをしているかは、ほとんど描かれない。たとえばミュージシャンと主婦とOLとジムに勤める若い男は出会って、事件が起こり、唐突に終わる。周到に描かれるのは、JRの駅周辺の地理。でも、登場人物の会話や挙措から、彼らがとても魅力的であることがわかる。

じつは私は小説に描かれた辺りに住んでいる。目黒の五百羅漢寺から不動尊のあたりを歩き回る話を読みながら、地形が正確に描写されているのに、私の感覚と大きく違うことに驚く。古川の、土地を描き出す才能に瞠目(どうもく)した。まったく、大した才能だ!
LOVE  / 古川 日出男
LOVE
  • 著者:古川 日出男
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(387ページ)
  • 発売日:2010-03-29
  • ISBN-10:4101305315
  • ISBN-13:978-4101305318
内容紹介:
家庭に居場所を得られず自転車を駆って遠征する少年、学校になじめず都バスに乗って往還する少女、超能力を持つ老女、ストリートミュージシャン、殺し屋、そして多くの野良猫。直感だけを生きる指針にして東京を疾走する者たちの、熱い鼓動がシンクロする-邂逅と別離のリンクから生まれるドラマを、軽やかなビート感にのせて鮮烈に描き、読書界を沸騰させた青春群像小説の傑作。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2005年10月13日

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