書評
『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(幻冬舎)
この人のことは絶対に本にするべきだ――編集者の大島加奈子さんにそう電話をかけてきたのは、脳科学者の茂木健一郎さんだった。出演しているNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の収録直後。この人とはその日のゲスト、青森のリンゴ農家、木村秋則さんのこと。農薬も有機肥料も使わないリンゴ栽培に成功した人物だ。
大島さんも木村さんに会った瞬間「この人は何かが違う!」と感じたという。「これはきちんと取材して、誠実なノンフィクションにしなければと思いました。専門用語で説明するのでなく、肌感覚で分かるものを、そして木村さんの人柄が伝わる本にしたかった」。信頼をよせていたノンフィクションライターの石川拓治さんに執筆を依頼。石川さんは1年をかけて青森に通い、取材を重ねたという。
現在の農法にたどり着くまでに実に30年近く。失敗の連続で家族は極貧状況に陥った。愚直に試み続ける木村さん、彼を支える一家の苦難は想像を絶する。そして彼が引き出した大いなる自然の力に、圧倒される。
初版6千部はすぐに重版がかかった。秋ごろから成功本、ビジネス本として注目されはじめ、売り上げが伸びた。最初は男性読者が多かったが今年に入ってから女性も4割強。30、40代が中心だ。「自分も頑張ろうと思った」という感想が多数。
木村さんは現在、講演の際、収穫が安定したら価格を下げるよう指導している。多くの人に無農薬無肥料のリンゴを選んでもらいたいからだ。「私は百姓だからな」という木村さん、表紙写真で実にいい顔をして笑っている。読後に見直すと、畏敬(いけい)の念がこみあげてくる。
大島さんも木村さんに会った瞬間「この人は何かが違う!」と感じたという。「これはきちんと取材して、誠実なノンフィクションにしなければと思いました。専門用語で説明するのでなく、肌感覚で分かるものを、そして木村さんの人柄が伝わる本にしたかった」。信頼をよせていたノンフィクションライターの石川拓治さんに執筆を依頼。石川さんは1年をかけて青森に通い、取材を重ねたという。
現在の農法にたどり着くまでに実に30年近く。失敗の連続で家族は極貧状況に陥った。愚直に試み続ける木村さん、彼を支える一家の苦難は想像を絶する。そして彼が引き出した大いなる自然の力に、圧倒される。
初版6千部はすぐに重版がかかった。秋ごろから成功本、ビジネス本として注目されはじめ、売り上げが伸びた。最初は男性読者が多かったが今年に入ってから女性も4割強。30、40代が中心だ。「自分も頑張ろうと思った」という感想が多数。
木村さんは現在、講演の際、収穫が安定したら価格を下げるよう指導している。多くの人に無農薬無肥料のリンゴを選んでもらいたいからだ。「私は百姓だからな」という木村さん、表紙写真で実にいい顔をして笑っている。読後に見直すと、畏敬(いけい)の念がこみあげてくる。
朝日新聞 2009年3月1日
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