書評
『少年民藝館』(筑摩書房)
初めて世に出たのは二十四年前というロングセラー本なので(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年。『少年民藝館』初版は1984年)、今さら紹介するまでもないと思っていたのだけれど……なかなか趣味のいい女友だちがこの本のことを知らなかったので、案外一般には知られていないのかもしれないと思った。もったいない。
決して安価な本ではないけれど、カラフルな表紙からして楽しく、所有せずにはいられなくなる。著者は柳宗悦(むねよし)の提唱する民藝運動に参加。倉敷民藝館や熊本国際民藝館の館長をつとめた人(この本が出版された九年後、九十五歳で亡くなった)。
一口に言うなら世界民藝図鑑。タイトルや文章からして、子どもにも読ませたいという気持で書かれた本なのだろう。世界の各地、それぞれの風土と暮らしの中から無名の人びとが作り出し、受け継いで来た、美しい道具類や雑貨の数かずをたくさんの写真で紹介している。
例えばブリキで作った鳥の形のローソク立て(アメリカ)、羊毛や麻で作ったショルダーバッグ(ペルー、エクアドル、イラン)、フェルトに刺繍をほどこした毛氈(もうせん)(イラン、インド)、柳の木で簡易に作った椅子(中国)……など。もちろん、日本のものもたくさん紹介されている。色模様のむしろ、たたみ草の円座、竹籠、竹すだれ、お餅で作った花、アイヌ模様の衣類……など。
私がこの本を入手したのは十年ほど前。柳宗悦の民藝運動には惹かれてはいたけれど、私にはちょっと渋すぎるというか堅すぎる趣味かなあ、という違和感もかすかにあった。
けれどこの『少年民藝館』(用美社)はさすが子ども向きに書かれたせいか(?)気やすく、親しみやすいものが多く、スンナリと入りこめた。以来、国内外の旅行に出る時は、「あそこに行ったら、あれを探そう」という、一つの指標になった。
著者は「まえがき」でこう書いている。「見せかけの、形も色も悪い道具類を毎日使っていると、心まで粗末な人になってしまいます。ですから形も色も良く、たよりになる健康な美しい道具を選びたいものです」。
「この『少年民藝館』は、見せかけの駄目なもの、着飾った怠けもの、高くて威張っているような道具を捨て、健康で無駄がなく威張らない美しさを備えてよく働く、良い友だちをみなさんに紹介したいと思って、世界中の美しい工藝品を選んで並べました」
「これらのものを作ったのは、特別に偉い人ではなく、世間に名も知られない普通の工人(こうじん)たちです」
著者は熱心なクリスチャンだったせいもあるだろうが、精神主義的すぎるなあと感じたが、うん、やっぱり正しいことを言っている。
【この書評が収録されている書籍】
決して安価な本ではないけれど、カラフルな表紙からして楽しく、所有せずにはいられなくなる。著者は柳宗悦(むねよし)の提唱する民藝運動に参加。倉敷民藝館や熊本国際民藝館の館長をつとめた人(この本が出版された九年後、九十五歳で亡くなった)。
一口に言うなら世界民藝図鑑。タイトルや文章からして、子どもにも読ませたいという気持で書かれた本なのだろう。世界の各地、それぞれの風土と暮らしの中から無名の人びとが作り出し、受け継いで来た、美しい道具類や雑貨の数かずをたくさんの写真で紹介している。
例えばブリキで作った鳥の形のローソク立て(アメリカ)、羊毛や麻で作ったショルダーバッグ(ペルー、エクアドル、イラン)、フェルトに刺繍をほどこした毛氈(もうせん)(イラン、インド)、柳の木で簡易に作った椅子(中国)……など。もちろん、日本のものもたくさん紹介されている。色模様のむしろ、たたみ草の円座、竹籠、竹すだれ、お餅で作った花、アイヌ模様の衣類……など。
私がこの本を入手したのは十年ほど前。柳宗悦の民藝運動には惹かれてはいたけれど、私にはちょっと渋すぎるというか堅すぎる趣味かなあ、という違和感もかすかにあった。
けれどこの『少年民藝館』(用美社)はさすが子ども向きに書かれたせいか(?)気やすく、親しみやすいものが多く、スンナリと入りこめた。以来、国内外の旅行に出る時は、「あそこに行ったら、あれを探そう」という、一つの指標になった。
著者は「まえがき」でこう書いている。「見せかけの、形も色も悪い道具類を毎日使っていると、心まで粗末な人になってしまいます。ですから形も色も良く、たよりになる健康な美しい道具を選びたいものです」。
「この『少年民藝館』は、見せかけの駄目なもの、着飾った怠けもの、高くて威張っているような道具を捨て、健康で無駄がなく威張らない美しさを備えてよく働く、良い友だちをみなさんに紹介したいと思って、世界中の美しい工藝品を選んで並べました」
「これらのものを作ったのは、特別に偉い人ではなく、世間に名も知られない普通の工人(こうじん)たちです」
著者は熱心なクリスチャンだったせいもあるだろうが、精神主義的すぎるなあと感じたが、うん、やっぱり正しいことを言っている。
【この書評が収録されている書籍】
ALL REVIEWSをフォローする