前書き
『新世代ミステリ作家探訪』(光文社)
まえがき
私は大学時代、ミステリ小説の同好会に所属していました。こうした文芸サークルは比較的おとなしい人が多いというか、大勢で騒ぐよりも少人数でしんみり趣味を語らうことを好む人が多い気がします。が、元来お喋(しやべ)り好きでお祭り好きでもあるせいでしょうか、同好会の中でも私は作家講演会の司会をしたり、他大との合同読書会に顔を出したりと、皆でわいわいがやがや本の話をする活動に物(もの)怖(お)じせず参加していました(単なる目立ちたがり屋だったのかも知れませんが……)。そうした性格は社会人となったいまも変わらず、ミステリ小説の書評や文庫解説を書く傍(かたわ)ら、作家トークショーの仕切り役や文芸イベントの運営なども多く行っています。そんな私が「これを自分の核にしよう」と思って取り組んでいる仕事の一つが、「Live Wire High Voltage Cafe」で開催しているイベントシリーズ〈新世代ミステリ作家探訪〉です。これはデビュー十年以内(二〇一九年末の企画立案時)のミステリ作家のうち特に私が注目する方をお招きし、一つのテーマを設定しながらゲストのミステリ観を掘り下げていく、というトークイベントです。
テーマは多岐に亘ります。「特殊設定ミステリ」「ライトミステリ」といったサブジャンルの定義を考える回もあれば、「ミステリにおける最新テクノロジーの描き方」「短編ミステリの書き方」といった創作技法にまつわる回もあります。いずれの回でも意識したのは、自分と同時代を生きる作家がどのような〝ミステリ哲学〟を持って創作に臨んでいるのかを伺うことでした。したがってトークでは自分が十年の間に感じたジャンルの変化、出版業界の変化、社会そのものの変化についてゲストに意見をぶつけることが多々あります。それでほんのちょっとでもゲストのミステリ論を引き出すことが出来れば大成功。とにかく〈新世代ミステリ作家探訪〉は同時代性を強く前面に打ち出したイベントシリーズにしようと取り組んできました。
本書は「Live Wire」で行ったトークイベント八回分と、WEB媒体に掲載したインタビュー二本を収録しています。各章の扉にはその回で設定したテーマについて書いていますので、そちらをチェックした上で、興味がある作家・テーマの章を拾い読みしていただいても構いません(収録順も実際にお話を伺った順番と少し入れ替えてあります)。ただし全ての章を通して読むと、一見つながりのなさそうな作家同士が実は幾つかの共通項を持っていることがお分かりになるはずです。
それではミステリの未来を担う作家たちを探訪する旅に出かけましょう!
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